イメージングレンズ選定ガイド

イメージングレンズ選定ガイド

本ページはイメージングリソースガイドセクション7.4です

イメージングレンズは、イメージングシステムの中でも複雑で繊細なコンポーネントです。レンズの選定において、何を選択するのか、そしてその意思決定の直接的結果としてどのようなトレードオフが生まれるのか、といったことは必ずしも明確ではありません。レンズのスペックシートはメーカーによって異なるため、比較するのは非常に困難です。しかしながら、この問題は往々にしてそこまで複雑ではありません。特定のアプリケーションに必要なレンズの種類を見つけ出すことは十分にやりがいのあることです。最上位のレンズがベストな選択か? ズームレンズはどうなのか? もしくはテレセントリックレンズは? このセクションでは、異なる種類のレンズ間の相違点と、アプリケーション毎にどれを選択するのがベストなのかを解説していきます。

セクション 7.4.1: 倍率可変レンズ

固定焦点レンズ

焦点距離と実視野の理解で解説した通り、固定焦点レンズは一定画角を持っています。このレンズは、異なる作動距離でもピントを合わせることができ、個々の構成レンズ全てを一緒に移動させることで実現されるものが最も多く、構成したレンズ素子間の間隔は変化しません。固定焦点レンズは、柔軟性が高く、優れた性能が得られるため、多くの主要なマシンビジョンアプリケーションに用いられるべきものです。固定焦点レンズは、プライムレンズ (写真撮影の用語) としても知られています。

Figure 1は、f=75mmの固定焦点レンズを二つの異なる距離にピントを合わせた時の図です。ピント調整時に個々の構成レンズ素子間の間隔は変わりませんが、像面から最も像面側に面したレンズ素子までの距離は大きく変わります。上側の図は無限遠にピントを合わせた時、対する下側の図はレンズから200mm離れた位置にピントを合わせた時 (作動距離が200mm) の図です。

Figure 1: f=75mmのダブルガウスタイプの固定焦点レンズを2つの異なる作動距離でピント合わせ。各構成レンズ素子間の間隔は、作動距離がシフトしても変化しない。

真の固定焦点レンズは、Figure 1に図示したように常にふるまいます。しかしながら、レンズの中にはピント調整時にレンズ素子間の間隔が一部変化するフローティング機構のデザインを採用するものがあります。このデザインの場合、レンズ素子間の変化がレンズの焦点距離に変化を与えますが、固定焦点レンズから独立したタイプと見なすほどの違いが通常ないため、同一分類のレンズとして捉えます。

ズームレンズ

固定焦点レンズが一定の画角を持つようにデザインされているのに対して、ズームレンズは焦点距離を変えられる、つまり実視野を変えられるようデザインされています。ズームレンズは、使用時に最大限の柔軟性が必要で、かつ高い解像力を必要としないアプリケーションには理想的です。つまり、イメージングの最中に実視野を積極的に変える必要が無い限り、これはベストな選択にはなりません。ズームレンズの場合、迅速かつ正確に焦点距離を変えるにはステッピングモーターが必要になります。

ズームレンズは個別のズーム比を持ちますが、これは任意のレンズに対して最も長い焦点距離を最も短い焦点距離で割った数字になります。例えば、焦点距離が8mmから48mmの間で変わる場合、このズームレンズは6Xズームレンズ (48mm/8mm = 6X) と言えます。ズームは比率でも表すことができます。前述のレンズの場合、ズーム比は6:1となります。

Figure 2は、同一のズームレンズを異なる焦点距離に設定した時の図です。像面に対するレンズ素子の相対的な間隔と距離は変わりますが、作動距離が変わることはありません。レンズの焦点距離を変えるのと同時にピントも維持するには精密な動作が求められるため、この複雑な機構はレンズシステムのコストに跳ね返ります。また、ズームレンズは、複雑な機構と光学素子が複数の役割を同時に果たすため、同程度の価格帯の固定焦点レンズほどの高い解像力は持ちえません。ズームレンズは、一つの焦点距離で最良の性能を得ようとするのではなく、広範な焦点距離にわたり機能することが求められるため、全体的な性能は低くなります。

Figure 2: A zoom lens at multiple optical magnifications.
Figure 2: 複数の光学倍率に設定した同一のズームレンズ

またレンズのデザインにもよりますが、ズームレンズの複雑な動作の直接的な結果としてもたらされる可能性がある興味深い光学特性に、焦点距離が変わるとFナンバーも変化するという点が挙げられます。この種のデザインは、写真撮影や動画撮影用レンズでは通常用いられませんが、マシンビジョン用レンズではそうではありません。Fナンバー (レンズの絞り/開口の設定) から、有効Fナンバーは倍率が変わると変化し、結果的に露出も変わることを想起することも重要です。

ズームレンズの定義では、視野を変えてもピントは合ったままです。レンズの焦点距離が変わるとピントがずれる場合は、そのレンズは厳密にはズームレンズではなくバリフォーカルレンズと見なされます。

マクロレンズ

マクロレンズは、倍率が1X (センサーが物体と同サイズ) もしくはそれ以上で、作動距離は比較的短めの固定焦点レンズの集まりと考えられます。倍率が高いため、マクロレンズは鏡筒にうたわれているFナンバーよりも通常2倍程度大きなFナンバーで動作する傾向があります (有効Fナンバーについての詳細は、Fナンバー (レンズの絞り/開口の設定) を参照)。典型的な固定焦点レンズは、スペーサーを用いることによって(レンズ用スペーサーやシム、エクステンダーレンズ 参照)、もしくは逆向きに撮像できるように裏返すことによって、マクロレンズに変換できます。マクロ構成時のレンズとその撮像画像は、Figure 3をご覧ください。

Figure 3: A 50mm fixed focal length lens paired with approximately 70mm extension length, yielding a 1.25X magnification at a 33mm working distance.

 Figure 3: A 50mm fixed focal length lens paired with approximately 70mm extension length, yielding a 1.25X magnification at a 33mm working distance.

Figure 3: f=50mmの固定焦点レンズに約70mm長の延長鏡筒を組み合わせることで、33mmの作動距離で1.25Xの倍率が得られる

Section 7.4.2: 固定倍率レンズ

テレセントリックレンズ

テレセントリックレンズは、システム内に高精度計測を求めるあらゆる場面に用いられるべきです。テレセントリックレンズは、多くのパワフルな光学対応力を持つ高度に特殊化された固定倍率レンズです。テレセントリックレンズの動作原理や利点は、テレセントリシティとパースペクティブエラーで詳しく紹介されています。

テレセントリックレンズの選定は、固定焦点レンズのそれと比べると難しく考えられがちですが、現実には多くの場合そうではありません。テレセントリックレンズと固定焦点レンズの選定についての詳細は、固定倍率レンズの選定方法 をご覧ください。

顕微鏡用対物レンズ

顕微鏡用対物レンズは、非常に小さな物体を一般的に1Xよりもはるかに大きな倍率で撮像するのに用いられます。このレンズは、他のイメージングレンズに比べると非常に短い単一の作動距離でのみ適切に機能する固定倍率オプティクスです。顕微鏡用対物レンズは、高倍率画像が必要で、作動距離の下限に厳しい制約が無い場合に用いられます。

対物レンズの場合、レンズの具体的な光学特性を説明するため鏡筒上にさまざまなデータが記載されており、有効に利用する上でのヒントになります。Figure 4は、厚さ0mmのカバーガラスと焦点距離200mmのチューブレンズでピントが合うようにデザインされた20X 無限補正 (無限系) 顕微鏡用対物レンズです。この対物レンズの開口数は0.42です (開口数についての詳細は Fナンバー (レンズの絞り/開口の設定) を参照)。顕微鏡用対物レンズについての詳細は、顕微鏡と対物レンズの理解をご覧ください。

 

Figure 4: Each microscope objective features certain data printed on its side, explaining to the type of objective it is and its optical properties.
Figure 4: 個々の顕微鏡用対物レンズの側面部に対物レンズの種類や光学特性を示す具体的データが記載されている
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