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オプティカルコーティングへの手引き
エドモンド・オプティクス・ジャパン株式会社

オプティカルコーティングへの手引き

 オプティカルコーティング (光学薄膜) は、薄膜の積層の組み合わせにより構成され、光が薄膜を通過する際に生じる光の干渉効果によって、光学系内の光の透過や反射の特性を高めるために用いられます。オプティカルコーティングの性能は、薄膜の積層数や個々の層の厚さ、またその層と前後の層の屈折率差に依存します。精密な光学素子に施される最も共通的なコーティングの種類には、反射防止 (Anti-Reflection (AR)) コーティング増反射 (ミラー用) コーティング、ビームスプリッター用コーティング、そしてショートパスフィルターやロングパスフィルター、或いはノッチフィルター等に用いられるフィルター用コーティングがあります。反射防止コーティングは、大抵の屈折光学素子に採用され、スループットの最大化とゴースト像発生の低減の目的で用いられます。増反射コーティングは、単波長、或いは広い波長帯にわたって反射率を最大化するためにデザインされていて、大抵はミラーに用いられます。ビームスプリッター用コーティングは、入射光を特定の比率で2つの光 (透過光と反射光) に分岐するために用いられます。フィルター用コーティングは、ライフサイエンスやメディカルアプリケーションの多くに用いられ、特定波長において光を透過、反射、吸収、減衰するために用いられます。エドモンド・オプティクスは、特注コーティングをはじめとして、どのようなアプリケーションニーズにも対応しています。

 オプティカルコーティングは、光の入射角度と偏光状態 (p偏光やs偏光、或いは非偏光) を条件にデザインされます。コーティングの設計入射角度とは異なる角度で光を入射させると、性能がある程度低下する結果を招きます。また極端に異なる角度で入射させると、コーティングが本来持つ機能が完全に失われる結果となります。同様に、設計された偏光状態とは異なる状態の光を入射させても、通常好ましくない結果となります。

 オプティカルコーティングは、五酸化タンタル (Ta2O3) や酸化アルミニウム (Al2O3) といった誘電体や金属材料の薄膜層を交互に蒸着することによって作られます。膜層の厚さは、光学膜厚換算で¼波長分 (QWOT) か½波長分 (HWOT) を用いるのが代表的です。なおここで言う波長とは、アプリケーションで実際に用いられる光の波長を指します。これらの薄膜が、高屈折率層と低屈折率層として交互に積層されることにより、必要となる光の干渉効果を作り出します。Figure 1は、広帯域 (BroadBand) ARコーティングのデザインサンプルの図解です。

Sample Three Layer BBAR Coating Design

Figure 1: 3層BBARコーティング (広帯域ARコーティング) において、¼波長膜厚 (QWOT) と½波長膜厚 (HWOT) の適切な組み合わせが、高透過かつ低反射損失な結果を生み出す

コーティング理論

 コーティングは、光の干渉メカニズムを通して、光の反射と透過を制御します。二つの異なるビームが同じ光路を伝播し、互いの位相も揃っている時は、光の波の山と谷の空間的位置もまた一致しています。この時、二つの波が重なり合うことによって増幅し、振幅のより大きな波を形成します。反対に二つのビームの位相がπ/2 (180°)ずれている時は、上述と反対の作用を及ぼし、重なり合った波は互いに相殺し合い、振幅のより小さな波を形成します。これらの効果は、各々増加的干渉 (constructive interference)と減殺的干渉 (destructive interference)として知られます。

多層膜構造全体の反射率に関連した公式1-4を以下に紹介します。

(1)$$ \begin{bmatrix}B\\C\end{bmatrix}= \Bigg\{ \prod_{p=1}^q \begin{bmatrix} \cos \delta_p & i \, \sin \frac {\delta_p}{\eta_p}\\\ i\, \eta_p \, \sin \delta_p & \cos \delta_p\end{bmatrix} \Bigg\} \begin{bmatrix}1\\ \eta_{\eta}\end{bmatrix} $$
(2)$$ \delta_p = \frac {2 \pi \, N_p \, d_p \, \cos \theta_p}{\lambda} $$
(3)$$ Y = \frac {C}{B} $$
(4)$$ R = \left ( \frac {\eta_0 -Y}{\eta_0 +Y}\right) \left(\frac{\eta_0 -Y}{\eta_0 +Y}\right) $$

 

q

膜の積層数

δ

位相量

η

各層の光学アドミタンス

Np

複合屈折率

dp

多層膜の物理的膜厚

λ

波長

θp

入射角

Y

積層全体の光学アドミタンス

R

積層全体の反射率

 

 光の波長と入射角度の条件が特定されると、性能を最適化するために、多層膜を構成する各層の屈折率と膜厚が検討できます。どの層の屈折率や膜厚を変更しても、多層膜全体の光路長に影響を与えてしまうため、屈折率境界面における波の位相状態を変えることになります。この効果は、単層ARコーティング (シングルARコーティング)の例を通して最も簡単に説明できます。光が単層コーティングの施されたガラス基板に入射すると、膜の表裏面のどちら側にも屈折率の境界面があるために、光の反射が生じます。最初の境界面で起きる光の重ね合わせにおいて反射率を最小にするには、この2つの反射光間で180°の位相ずれが必要になります。この位相の違いは、正弦波のλ/2分のシフト量と同じになります。またこのシフト量は、光学的膜厚をλ/4にした時に達成できます (Figure 2の図を参照)。

180 Degree Phase Shift between Two Reflected Beams

Figure 2: 2本の反射ビーム間に180°の位相差があると減殺的干渉を生み出し、反射ビームがなくなる結果となる

 屈折率は、光学的膜厚 (即ち位相)だけでなく、各境界面での反射特性にも影響を及ぼします。反射量は、フレネルの公式 (公式 (5))を通して定義されます。この公式は、屈折率境界面で生じる垂直入射 (0°入射)時の反射量を表し、境界面を構成する2種類の屈折率の違いから求められます。

(5)$$ R = \left (\frac {n_1 -n_2}{n_1 + n_2}\right)^2 $$

 考慮しなければならない最後のパラメータは、コーティングをデザインするために用いる光の入射角です。入射角度がデザインしたものと異なれば、コーティングを構成する各層に入射する光の角度や光路長に影響を及ぼします。これは、反射ビームにおける位相にも影響を与えます。垂直入射以外の角度で光が入射すると、各屈折率境界面における反射は、s偏光とp偏光では異なります。これは、光の偏光状態によって得られる光学性能が異なることを意味しています。偏光ビームスプリッターのデザインは、この現象を巧みに利用した例と言えます。

コーティング技術

真空蒸着法

 真空蒸着法は、真空チャンバー内の蒸着材料を熱衝撃か電子ビーム衝撃のどちらかを用いて蒸発させます。蒸発によって光学面上に付着・堆積した蒸着材料は、熱や真空圧、また基板ポジションや蒸着中の回転の正確な制御により、設計した膜厚を持つ均質な光学コーティングとなります。比較的ソフトな性質の膜となるこの蒸着法は、不均一な膜か多孔質な膜となります。この不均一なコーティングは、周囲の水分 (湿気) を吸収してしまうことで、膜層の屈折率に変化を与え、性能の低下を引き起こすことがあります。真空蒸着コーティングは、イオンビームを基板表面に直接照射するイオンビームアシスト蒸着を用いることで、耐性を高めることができます。イオンビームアシスト蒸着は、基板に対する蒸着材料の密着度を向上させ、より緻密で強いコーティングを作り出します。しかしながら、より多くのストレスも持ち合わせます。

イオンビームスパッタリング法 (IBS法)

 イオンビームスパッタリング法 (IBS法) は、高エネルギー電界を用いてイオンビームを加速させます。この加速は、イオンに大きな運動エネルギーを与え、蒸着材料に衝突してターゲットの粒子をはじき飛ばします (スパッタ)。はじき飛ばされた蒸着材料が、今度は光学面で衝突、付着し、緻密な膜を形成します。IBS法は、その精密で再現性の高い点から、既に確立された技術と言えます。

Ion-Assisted E-Beam Deposition Process

Figure 3: イオンアシストビーム蒸着法では、イオンガンを光学面に照射して膜の密着性と密度を向上させる

プラズマスパッタリング法

 プラズマスパッタリング法は、一連の技術を組み合わせた蒸着法で、先進的プラズマスパッタリングとかマグネトロンスパッタリングとも呼ばれています。コンセプト的にプラズマ生成が一般に使われています。このプラズマ内のイオンが薄膜材料内で加速し、材料の粒子をはじき飛ばして対象光学面上にスパッタさせます。プラズマスパッタリングと呼ばれるどのタイプのスパッタ法も、それぞれに特徴があり、それぞれにメリット・デメリットが存在しますが、当社ではこれらのテクノロジーをひとまとめにしています。その理由は、動作的コンセプトに共通性が見いだされ、グループ内の相違点が本ページに紹介した他のコーティング技術との違いよりも遥かに小さいためです。

原子層堆積法 (ALD法)

 真空蒸着法とは違い、原子層蒸着法 (ALD法) の薄膜材料は、固体からの蒸発である必要はなく、ガスを利用しています。ガスを用いているにも関わらず、温度的には真空チャンバー内でも使用できます。ALD法では、プリカーサ (前駆体) を投入して原子層を一層ずつ堆積していくもので、各原子には自己制御性があります。この化学的デザインは、一層ずつ原子を堆積することができるため、面がどんな形状であっても蒸着することができます。膜層の厚さやデザイン的制御の面でとりわけ優れますが、堆積スピードの遅さが難点です。

サブ波長の構造面

 光の波長よりも小さな面構造は、蛾の眼のテクスチャリング模様の発見以来、光学において研究テーマの一つになっています。表面テクスチャリングは、基板の面構造の修正を必要とし、技術的にはまだ発展途上ですが、高屈折率と低屈折率材料の薄膜層を交互に積層する従来の薄膜コーティング技術の比較対照になります。光学面上に施された微細な構造パターンは、ランダムにも、また蛾の眼のパターンのように周期的にもなります。サブ波長の構造面は、周期的パターンの場合はフォトリソグラフィ技術を用いて、またランダムパターンの場合はプラズマエッチング法をアレンジすることで製作することができます。

コーティング製造

Planetary Substrate Holder

 光学コーティングに関連する製造プロセスには、生産活動的面と資本集約的面の両方、そして時間浪費面があります。コーティングのコストに影響を与えるファクターには、コートするオプティクスの数やサイズ、コーティングする際の積層数、コート面の数等があります。またコーティングを行う際に用いる蒸着工程も、コーティングの製作コストや性能を決めていく上で大きなファクターになります。これに加えて、コート付きオプティクスの品質を最高レベルにしていくためには、適切な作業準備も必要です。

 コーティング前のオプティクスの洗浄と準備は、工程の中で極めて重要な部分です。コートする光学部品は、蒸着工程前には綺麗な面でなければなりません。蒸着前段階で取り除けなかった基板上の汚れは、蒸着することでその汚れが却って強調されてしまうことがあるからです。このため、エドモンド・オプティクスでは洗浄工程を極めて注意深く行い、一貫して高品質な最終製品を製造しています。

 コーティングの蒸着技術にはいくつもの異なるタイプが存在し、それぞれにメリットとデメリットがあります。エドモンド・オプティクスは、この中の多くの蒸着技術を導入しています。どのコーティング技術があなたのアプリケーションにとってベストなのかを検討するため、まずは弊社にお問い合わせください。

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