高反射コーティング

高反射コーティング

本ページはレーザーオプティクスリソースガイドセクション4.4です

高反射 (Highly Reflective; HR) コーティングは、レーザーや他の光源からの光を反射し、その際の損失を最小化するために用いられます。反射中の吸収や散乱は、スループットの減少や潜在的なレーザー誘起損傷につながります。HRコーティングは、レーザービームの光路の折り返しやレーザーキャビティのエンドミラーなど、一般的なレーザーオプティクスアプリケーションに用いられます。

金属膜ミラーコーティングは、反射アプリケーションの多くに用いられますが、レーザーアプリケーションでは、標準の金属膜ミラーコーティングよりも高い反射率が求められる傾向があります。このため、レーザーミラーには、金属膜ミラーコーティングではなく、より高い反射率が実現できる誘電体多層膜のHRコーティングが通常用いられます。金属面は、結合の弱い電子が入射光の波を受けると、大きなインピーダンスや障害を受けることなく自由に振動するために光を反射します。しかしながら、どの金属も入射光をある程度吸収します。このため、金属膜ミラーコーティングにハイパワーレーザーを用いると、損傷を受けやすくなります1

誘電体膜HRコーティングは、フレネル反射中に増加的干渉 (Constructive Interference)によって光を反射します。HRコーティングは、フレネル反射を最小化するために減殺的干渉 (Destructive Interference) を利用するのではなく、同反射を最大化する増加的干渉を利用しており、ARコーティングとは正反対の目的になります(Figure 1)。この増加的干渉は、特定波長域で反射率を最大化するために選ばれた高屈折率層と低屈折率層を交互に積層することによって起こります。ブラッグ反射鏡としても知られるλ/4誘電体膜ミラーでは、各層は設計波長の1/4の厚さに対応しています。この層の厚さは、真空中の波長ベースではなく、材料内での波長ベースになります2

Figure 1: 誘電体膜のHRコーティングは、フレネル反射の増加的干渉 (Constructive Interference) を利用して金属膜反射鏡のそれよりも高い反射率を実現する
Figure 1: 誘電体膜のHRコーティングは、フレネル反射の増加的干渉 (Constructive Interference) を利用して金属膜反射鏡のそれよりも高い反射率を実現する

誘電体膜のオーバーコートも、金属膜ミラーの取り扱いを改善し、金属膜の耐久性を向上させ、膜の酸化を防ぎ、また特定波長域での金属膜コーティングの反射率を高めます。金属膜コーティングは、保護用のコーティングが施されていない場合は非常にデリケートで、取り扱いや洗浄の際には特別な注意を要します。保護膜の付いていない金属膜コーティングの表面を一切触れてはいけませんし、洗浄も清潔な乾燥エアー以外行ってはいけません。誘電体膜コーティングの付いた金属膜ミラーの洗浄は、イソプロピルアルコールかアセトンを用いることができます。EO標準の金属膜ミラーコーティングのリストをTable 1に、EO標準の誘電体膜HRレーザーコーティングのリストをTable 2に紹介します。

Table 1: EO標準の金属膜ミラーコーティングの反射率スペック
Table 1: EO標準の金属膜ミラーコーティングの反射率スペック
Standard HR Laser Coatings
DWLReflectivity SpecificationsLIDT, Pulsed
$ \left( \frac{\text{J}}{\text{cm}^2} \right)$
LIDT, CW
$ \left( \frac{\text{MW}}{\text{cm}^2} \right) $
266nm Rabs >99.5% @ DWL, Ravg >99.5% 263 - 268nm 2.5, 20ns @20Hz 1
343nm Rabs >99.8% @ DWL, Ravg >99.5% 339 - 346nm 6, 20ns @20Hz 1
355nm Rabs >99.8% @ DWL, Ravg >99.5% 351 - 358nm 6, 20ns @20Hz 1
515nm Rabs >99.8% @ DWL, Ravg >99.5% 509 - 520nm 15, 20ns @20Hz 1
532nm Rabs >99.8% @ DWL, Ravg >99.5% 523 - 537nm 15, 20ns @20Hz 1
1030nm Rabs >99.8% @ DWL, Ravg >99.5% 1020 - 1040nm 20, 20ns, @20Hz 1
1064nm Rabs >99.8% @ DWL, Ravg >99.5% - 1074nm 20, 20ns @20Hz 1
Table 2: EO標準の誘電体膜HRレーザーコーティングの反射率スペックとレーザー誘起損傷保証閾値。

参考文献

  1. Field, Ella S., et al. “Repair of a Mirror Coating on a Large Optic for High Laser-Damage Applications Using Ion Milling and over-Coating Methods.” Laser-Induced Damage in Optical Materials: 2014, July 2016, doi:10.1117/12.2067920.
  2. Paschotta, Rüdiger. Encyclopedia of Laser Physics and Technology, RP Photonics, October 2017, www.rp-photonics.com/encyclopedia.html
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