超短パルスレーザーシステムの温度維持をサポート

 

熱レンズ効果が超短パルスハイパワーシステムを使用不能にする恐れあり

 

利得媒体が熱効果の影響を受けにくくするのには限界がある

 

熱レンズ効果を最小化する共振器用オプティクスがデザイン能

 

近年の高分散ミラーの進歩がこの問題の解決に有用

超短パルスレーザーは、その短いパルス持続時間と高いピークパワーから、材料加工から医療用レーザー、そして非線形イメージングや顕微鏡学まで、広範なアプリケーションで最適となります。しかしながら、超短パルスレーザーはとりわけ熱レンズ効果に敏感であり、熱が利得媒体または共振器内のオプティクスを変形させたり、屈折率勾配を招いたりします。このことは超短パルスシステムに弊害をもたらし、パルスビームを生成するモード同期を妨げることすらあります。エドモンド・オプティクスのパートナー企業である UltraFast Innovations (UFI) 社が、高分散な共振器ミラーを進化させたことで、熱効果が無視できる程度のオプティクスが開発可能になりました。

 熱レンズ効果はなぜ「熱い話題」なのか?

熱レンズ効果は、活性利得媒体のビーム軸近傍が媒体の他の部分に比較してに高温になると発生し、横方向に対して屈折率勾配を生じさせます。その結果、レーザー共振器に位置ズレが起き、異なるレーザーモード分布の発生やビームポインティングのドリフトの原因となり得ます。共振器内ミラーも超短パルス発振器の極めて重要な部分であり、熱効果によってそれが歪んでしまうこともあります。レーザー結晶内にビームを一点集光させる場合、ミラーの曲率半径の変化が焦点位置を変化させ、超短パルスレーザーのモード同期を妨げて、使用不能にすることさえあります。利得媒体固有の熱特性を変化させるためにできることはさほど多くないものの、熱レンズ効果を防ぐために、共振器ミラーの適切な選択機会があります。

 解決法:特殊な高分散ミラー

近年のコーティングデザインの進歩は、熱効果の少ない低損失な高分散ミラーの開発を可能にしました。これは、光学コーティングのさまざまなパラメーターを慎重に操作することで実現します。熱的安定性に加えて、ほとんどの光学媒体に存在する正の GDD を補償するために、ミラーは高い反射率と負の群遅延分散 (GDD) を提供しなければなりません。Figure 1は、1030nmの超短パルスレーザーで使用するためにデザインされた、熱レンズ効果の無視できる高分散ミラー #17-070 (またはUFI社部番 HD64) の反射率とGDD特性です。このミラーは、Yb:YAG、Nd:YAG、ホルミウム、ツリウムなどの高出力固体レーザーに非常に有益です。

Spectral and GDD performance of #17-070, or UltraFast Innovations part number HD64, a 1030nm highly-dispersive mirror with negligible thermal lensing
Figure 1:熱レンズ効果が無視できる程度の 1030nm 高分散ミラー#17-070 またはUFI社品番 HD64の分光およびGDD性能

熱性能試験

この新たな高分散ミラーの熱レンズ効果のレベルを特性化するために試験を行いました。連続波 (CW) 動作でYb:YAG 薄型ディスクレーザー内にある共振器ミラーの温度を監視するのに、赤外線カメラ (FLIR SC305) が用いられました。新たな熱レンズ効果減少技術を採用しない、 -3,000 fs2 のGDD特性をもつ代表的な高反射ミラーは、50K を超える温度上昇がありました (Figure 2)。その結果、レーザーモードと発振器の安定性が低下しました。しかしながら、-1,000 fs2 および -3,000 fs2 のGDD特性をもつ高分散ミラーを同じセットアップ内で試したところ、それぞれ 10K および 20K の温度変化しかありませんでした (Figure 3 および 4)。これらのミラーは、モードや発振器の安定性において熱に誘導される顕著な効果は見受けられず、レーザーは目的どおりに機能しました。

Stemmed Mirrors were shown to maintain surface flatness better than conventional mirrors by a factor of 2.
Figure 2:新たな低熱レンズ効果用コーティングを採用しない高反射ミラーは、温度が57K変化し、システム性能の低下に繋がった
Stemmed Mirrors were shown to maintain surface flatness better than conventional mirrors by a factor of 2.
Figure 3:-1,000 fs2 のGDD特性をもつ低熱レンズ効果のミラーは、10K の温度変化があったものの、検知可能な熱による性能の低下は見られなかった
Stemmed Mirrors were shown to maintain surface flatness better than conventional mirrors by a factor of 2.
Figure 4:-3,000 fs2 のGDD特性をもつ低熱レンズ効果のミラーは、20K の温度変化があったものの、検知可能な熱による性能の低下は見られなかった

エドモンド・オプティクスの低熱レンズ効果の超短パルスレーザー用ミラー

UFI

UltraFast Innovations (UFI) 1030nm 熱レンズ効果低減 高分散超短パルスミラー

  • 熱レンズ効果を低減した超短パルス用高分散コーティング
  • 5°入射で-1000 fs2までの高位負GDD
  • 50nmの帯域幅に対して99.5%超の最小反射率 (p偏光)
  • ハイパワー超短レーザーパルスの生成に最適
UFI

低熱レンズ効果の特注ミラー

他の波長やGDDのミラーがご必要ですか? ご希望のスペックをお知らせください。エドモンド・オプティクスとUltraFast Innovations社が協力して、お客様のニーズに合わせた特注ミラーを製造します。

参考文献

  1. O. Pronin “Towards a Compact Thin-Disk-Based Femtosecond XUV Source”, Dissertation an der Fakultät für Physik der Ludwig–Maximilians–Universität, München, 2012.

FAQ (よくある質問)

超短パルスコーティングの世界的権威であるUltraFast Innovations社のDr. Vladimir Pervakが、お客様から寄せられたいくつかのFAQにお答えします。

FAQ  チタンサファイアレーザーには低熱レンズ効果ミラーが必要?
いいえ、チタンサファイアレーザーには熱レンズ効果が問題となるほどの高い平均パワーが通常ありませんから、熱的安定性技術を備えていない高分散ミラーを使用することができます。しかしながら、Er:YAG、Nd:YAG、ホルミウム、ツリウムレーザーなどの高出力固体レーザーでは、低熱レンズ効果は重要です。
FAQ  ファイバーレーザーには低熱レンズ効果ミラーが必要?

いいえ、ファイバーレーザーには熱レンズ効果を発生させる固体共振器がありませんから、同様に熱的安定性技術を備えていない高分散ミラーを使用することができます。しかしながら、Yt:YAG、Nd:YAG、ホルミウム、ツリウムレーザーなどの高出力固体レーザーでは、低熱レンズ効果は重要です。

FAQ  低熱レンズ効果ミラーはエドモンド・オプティクスから購入できる?

はい、エドモンド・オプティクスは低熱レンズ効果ミラーを標準品として提供しており、即日出荷可能です。UFI社部番 HD73や異なる仕様の他の製品をご希望の場合は、特注デザインを検討しますので、お問い合わせください。

FAQ  すべての高分散ミラーの熱レンズ効果は無視できるレベル?

いいえ、低熱レンズ効果ミラーを作成するには、コーティングパラメーターの慎重な操作に加え、他の仕様とのトレードオフが必要になります。アプリケーションに対して熱効果が重要となるようでしたら、こうした条件に合わせて特にデザインされたオプティクスで対処する必要があります。

技術資料

アプリケーションノート

理論的説明や公式、図解などを網羅した技術情報やアプリケーション実例です。

Ultrafast Dispersion
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Highly-Dispersive Mirrors
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超短パルスレーザーのLIDT
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Ultrafast Lasers – The Basic Principles of Ultrafast Coherence
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光学基板の熱的特性
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動画

簡単なヒントからアプリケーションベースのデモに至るまで、企業や製品に関する動画情報です。

分散補償のための高分散超短パルスミラー 
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ウェビナー

オプティクスやイメージングの広範なテーマに関する、エドモンド・オプティクスの専門スタッフによる録画ウェビナーです。

Ultrafast Optics: Challenges and Solutions 
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