熱デフォーカスのパッシブ補正

 

フォーカスの再調整が不要

 

衝撃や振動による有害な影響を低減

 

1.1型までのラージセンサーに対応

熱膨張が画像性能に及ぼす悪影響を軽減

物質は温度が上がると膨張し、温度が下がると収縮します。材料の寸法変化の大きさは、熱膨張係数 (CTE) と、材料が等方性か異方性かに関係します。また、透明な材料は温度によって屈折率が変化します。このような熱現象は、温度変化の激しい環境のアプリケーション向けに温度制御可能でロバストなマシンビジョンシステムを必要とするメーカーやイメージングシステムインテグレーターにとって大きな課題となっています。伸縮率は材料によって異なるため、金属とガラスを組み合わせたシステムでは、さらに難しい問題が生じます。金属やプラスチックなどの材料は、光学系に使用される光学ガラス材料の10倍から100倍もの熱膨張係数 (CTE) を有しています。

材料の長さは、その材料固有のCTEに基づいて、温度によって変化する。
Figure 1: 材料の長さは その材料固有のCTEに基づいて 温度によって変化する

部品のサイズが小さかったり、動作温度の変化が小さかったりすると、CTEの差はあまり問題にならないかもしれません。直径25mm以上の光学素子を10~15μmのクリアランスで鏡筒に密着させているシステムでは、温度が低くなると光学素子が大幅に収縮することがあります。鏡筒の直径が小さくなることで、内部のレンズ素子に大きな圧力がかかり、破損やエッジの欠けが発生する可能性があります。反対に温度が上昇すると、内径のギャップが大きくなり、単レンズの場合でも組レンズの場合でも、位置ずれや回転の可能性が高くなります (Figure 2)。

A. 単レンズ素子の回転移動B. 組レンズの回転C. 単レンズの偏心D. 組レンズの偏心こうした誤差はすべてイメージングレンズにおけるガラスレンズと金属製オプトメカニクスの熱膨張が原因です。
Figure 2: 単レンズ素子の回転 (A)、組レンズの回転 (B)、単レンズの位置ずれ (C)、組レンズの位置ずれ (D)。こうした誤差はすべてイメージングレンズにおけるガラスレンズと金属製オプトメカニクスの熱膨張が原因になる

屈折率

物質の屈折率とは、媒質中を進む光の速度と真空中の光の速度の比のことです。屈折率の温度係数は、この比率が温度によってどれだけ変化するかに関係します。温度係数についての詳細は光学基板の熱的特性をご参照ください。

複合的な熱的効果

熱デフォーカスは、レンズシステムの動作温度範囲における屈折率の変化と物質のサイズ変化の両方に直接関係しています。例えば、加熱されたレンズ鏡筒は膨張し、素子の頂点と頂点の間隔が離れるため、前述のような位置ずれや回転が多少起きることになります。これによりガラス材料の屈折率が変化し、すべてが組み合わさって、使用時の温度変化に伴うレンズ システムの結果的な焦点位置に影響を与えます (Figure 3)。

温度変化によってレンズの屈折率と位置が変化することで、レンズの焦点距離が変化する。
Figure 3: 温度変化によってレンズの屈折率と位置が変化することで、レンズの焦点距離が変化する

アサーマル化の種類

温度による焦点距離の変化を最小にするためのアサーマル化 (熱的補償) は、アクティブまたはパッシブに行うことができます。これらの用語は、エンドユーザーと、その部品をその環境で使用するために必要な作業量を指します。

アクティブなアサーマル化は、補助的なハードウェアの使用を含む場合があります。こうしたハードウェアは、レンズシステムのフォーカスを「アクティブ」に補償もしくは修正する、または設計焦点距離でレンズシステムを維持するための加熱もしくは冷却機能を提供するものです。いずれの例でも、光学素子をシステムの望ましいフォーカス位置、もしくは温度設定点で安定させるため、アクティブ システムへのある種のフィードバック制御を必要とします。

アクティブなアサーマル化では、より一般的な光学材料を使用し、動作温度範囲の広いアプリケーション環境での使用に耐える堅牢さを有しますが、このタイプのアサーマル化は、実装がかさばり、コストが高くなる可能性があります。

パッシブなアサーマル化は、材料のCTEの差を利用し、それを光学系の設計に組み込んで、屈折率と寸法変化の両方を補償することで実現します。異なる素材を組み合わせることで、人的介入や幾層もの電気機械的なサポートを追加する必要なく、温度が変化しても焦点距離を固定することができるのです。パッシブなアサーマル化では、技術的な構成要素が少ないため、一般的にスペースに制限のあるアプリケーションに適した製品を製造することができます。残念ながら、パッシブなアサーマル化はすべての光学設計で可能なわけではなく、設計範囲内で必要な補償をパッシブに実現できない場合もあります。

イメージングレンズと性能

アサーマルイメージングレンズは、上記いずれかの方法で製造されます。しかし、 エドモンド・オプティクスとRuda Cardinal社が設計し、エドモンド・オプティクスが製造したTECHSPEC® アサーマル イメージングレンズは、レンズを衝撃や振動による損傷から保護する産業目的の耐久化に加え、パッシブなアサーマル化が 施されています (Figure 4)。

焦点距離150mm、f/4のTECHSPEC アサーマルイメージングレンズののMTF性能は、 -10◦C から +50◦Cまでほぼ同じであることがわかる。.
焦点距離150mm、f/4のTECHSPEC アサーマルイメージングレンズののMTF性能は、 -10◦C から +50◦Cまでほぼ同じであることがわかる。
Figure 4: 焦点距離150mm、F4のTECHSPEC アサーマル イメージングレンズののMTF性能は、 -10℃ から +50℃までほぼ同じであることがわかる。

下記のFigure 5に示す例では、60℃にわたる動産温度範囲でMTFを維持するよう設計されているため、幅広いアプリケーションに使用することが可能です。

焦点距離150mm、F4のTECHSPECアサーマルイメージングレンズの-10◦Cから+50◦Cの温度範囲における増の高さ(フィールド位置)に対するMTF。.
Figure 5:焦点距離150mm、F4のTECHSPEC アサーマル イメージングレンズの-10℃から+50℃の温度範囲における像高 (フィールド位置) に対するMTF性能

エドモンド・オプティクスのアサーマルレンズ

TECHSPEC

アサーマル イメージングレンズ

  • 広い温度範囲にわたり高解像力を維持できるデザイン
  • 衝撃や振動の環境に向けて耐久化
  • 1.1型までのラージセンサーに対応
  • パッシブなアサーマル化による熱的光学安定性

FAQ (よくある質問)

FAQ  レンズがアサーマルレンズかどうかはどのように知ることができる?
製品資料やスペックシートに動作温度の仕様がない場合は、光学メーカーまたはプロバイダーにお問い合わせください。光学メーカーは、このような性能情報を保証できるはずです。
FAQ  光学系はアクティブとパッシブの両方のアサーマライゼーションを有することができる?

はい。光学系は必要な動作温度範囲に応じて両方のアサーマル化を施すことができます。

FAQ  温度はどのように光学系に悪影響を及ぼす?

温度変化や動作温度範囲外での動作はイメージングレンズにさまざまな損傷を与える可能性があります。温度上昇もしくは下降することによって焦点が変化し、素子が回転、位置ずれ、移動することがあります。また、温度が下がると内部の素子が欠け、破損、粉砕することがあります。

FAQ  レンズシステムが複数の種類の耐久化を有することは可能?

何種類もの過酷な環境要因に対する耐久化を備えた標準品を見つけることは難しいかもしれませんが、こうした点を念頭にイメージングレンズをデザインすることは可能です。TECHSPEC アサーマル イメージングレンズは衝撃や振動の影響を最小限にするための耐久化が施されています。それ以外の特注による耐久化製品については当社までご相談ください。

技術情報

アプリケーションノート

理論的説明や公式、図解などを網羅した技術情報やアプリケーション実例です。

光学基板の熱的特性
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パッシブなアサーマル化 (熱的補償) への手引き
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イメージングレンズの高耐久化
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レンズの構造
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動画

簡単なヒントからアプリケーションベースのデモに至るまで、企業や製品に関する動画情報です。

LIGHT TALK - EPISODE 10: Hot & Cold with Nick Sischka 
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耐久化イメージングレンズ 
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LIGHT TALK - EPISODE 5: Ruggedized Imaging Lenses with Cory Boone and Ben Weaver 
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EOイメージングレンズができるまで 
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ウェビナー

オプティクスやイメージングの広範なテーマに関する、エドモンド・オプティクスの専門スタッフによる録画ウェビナーです。.

Hot & Cold: Athermalization Ruggedization
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Ruggedized Imaging Lenses
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技術ツール

オプティクス、イメージング、フォトニクス産業で一般に使用・参照される公式に基づいた研鑽ツールです。

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