ビームエキスパンダーの試験

ビームエキスパンダーの試験

レーザービームエキスパンダーは、広範なレーザーアプリケーションに向け入射コリメートビームの直径を拡大するのに用いられます。ビームエキスパンダーの品質を特定する際、その透過波面誤差、もしくはビームエキスパンダーから出射されるビームの波面とその理想的形状との偏差の試験を行うことが重要です。透過波面誤差を解析することで、ビームエキスパンダーの性能に対して収差がいかに影響しているのかを特定することができます。

波面とは、光波が同じ位相を持つ面を指します。波面は波が伝播する方向に対して垂直なため、コリメート光の場合は平坦な波面となり、収束光もしくは発散光の場合は曲率を持つ波面となります (Figure 1)。光学部品における収差は、透過波面や反射波面の歪みにつながります。これは透過波面誤差もしくは反射波面誤差として知られています。

Figure 1: レンズに入射する完全にコリメートされた光は平坦な波面を持つが、収差の無い理想的なレンズを通過後に収束した光の波面は、集光スポットに中心を持つ球面形状になる。
Figure 1: レンズに入射する完全にコリメートされた光は平坦な波面を持つが、収差の無い理想的なレンズを通過後に収束した光の波面は、集光スポットに中心を持つ球面形状になる。

ビームエキスパンダーの透過波面誤差の測定には、高いダイナミックレンジと精度で試験を行うシャックハルトマン波面センサー (SHWFS) が一般に用いられます。SHWFSは、同一のマイクロレンズもしくは小型レンズのアレイで構成され、そのそれぞれが入射光の一部をディテクターアレイの小さな区域に集光します (Figure 2)。

Figure 2: シャックハルトマン波面センサーは、その応答の早さ、使いやすさに加え、比較的低コストであることから、ビームエキスパンダーの透過波面誤差を試験するのに広く用いられる。
Figure 2: シャックハルトマン波面センサーは、その応答の早さ、使いやすさに加え、比較的低コストであることから、ビームエキスパンダーの透過波面誤差を試験するのに広く用いられる。

平坦な波面を持つ完全にコリメートされた入射波は、各マイクロレンズの中心間の距離で等間隔に区切られた集光スポットのグリッド内に集光されます。波面誤差を含む入射波では、ディテクター上の集光スポットの位置に変位が生じます (Figure 3)。この変位 (または集光スポットにおける強度の減少) が、アレイ内の各マイクロレンズに入射する波面の局所的な傾きを特定するのに用いられます。その後、個々の傾きを用いて全体の入射波面を近似します。

Figure 3: SHWFSに入射する光波の波面誤差は、ディテクターアレイ上の集光スポット位置の変位につながる。
Figure 3: SHWFSに入射する光波の波面誤差は、ディテクターアレイ上の集光スポット位置の変位につながる。

通常、各マイクロレンズからの集光スポットは、入射波を正確に再構成するため、それぞれのセンサーセグメント上で10ピクセル以上をカバーします。SHWFSの感度は、集光スポットがカバーする検出面の大きさに比例して向上します。しかしながら、これはダイナミックレンジが短くなるというトレードオフを伴います。経験則的には、感度とダイナミックレンジ間の合理的な妥協点を得るため、各マイクロレンズの集光スポットはそのレンズが関与するセンサーセグメントの半分以上をカバーすべきではありません。1

取得するデータ点の量は、アレイ内のマイクロレンズの数を増やすことで増加させることができ、実行されなければならない波面スロープの平均化の量を減らします。しかしながら、マイクロレンズの数を増やすことは、各マイクロレンズに割り当てられるピクセルの量を減らすことにもなります。また、マイクロレンズの数を減らしてサイズを大きくすると、複雑な波面を適切にサンプリングできない可能性があり、再構築した波面を人為的に補正しなくてはならなくなる場合があります。ただし、大きなマイクロレンズのほうが、なだらかに変化する波面を正確かつ高感度に測定することができます。2 レーザービームエキスパンダーの試験に当たっては、こうしたトレードオフの全てを考慮する必要があります。

レーザービームエキスパンダーの透過波面は、波の量で規定されます。例えば、532nm用にデザインされたビームエキスパンダーがλ/10 (P-V) の透過波面誤差を持つ場合、理想的な出射波面で許容される歪みの最大量は以下の式で求められます:

$$ \frac{\boldsymbol{\lambda}}{\boldsymbol{10}} = \frac{\boldsymbol{532} \textbf{nm}}{\boldsymbol{10}} = \boldsymbol{53.2} \textbf{nm} $$

ビームエキスパンダーは、通常、その透過波面誤差がλ/4である場合に「回折限界」であると考えられます。

ビームエキスパンダー理論 ビームエキスパンダー選定ガイド ビームエキスパンダーのピント調整機構: 回転式とスライド式
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参考文献

  1. Forest, Craig R., Claude R. Canizares, Daniel R. Neal, Michael McGuirk, and Mark Lee Schattenburg. "Metrology of thin transparent optics using Shack-Hartmann wavefront sensing." Optical engineering 43, no. 3 (2004): 742-754.
  2. John E. Greivenkamp, Daniel G. Smith, Robert O. Gappinger, Gregory A. Williby, "Optical testing using Shack-Hartmann wavefront sensors," Proc. SPIE 4416, Optical Engineering for Sensing and Nanotechnology (ICOSN 2001), (8 May 2001); doi: 10.1117/12.427063

 

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