倍率可変レンズの選定方法

倍率可変レンズの選定方法

本ページはイメージングリソースガイドセクション7.5です

イメージングレンズを選定するには、イメージングシステムの基本的なシステムパラメータを知っておかなければなりません(詳細はイメージングシステムの6つの基本パラメータを参照)。作動距離、実視野、そして解像力は、適切なレンズ製品群を選定する際に最低でも必要な項目になります。

本項では、固定焦点レンズ、ズームレンズ、そしてマクロレンズが同じ原理で動作すると見なし、同一の方法で選定できるものとします。ズームレンズの場合は、個々の焦点距離で規定され、かつズーム機能をその距離で固定していることを前提にします。

全ての倍率可変レンズは、式 1に基づき焦点を結びます。

(1)$$ \frac{1}{z'} = \frac{1}{z} + \frac{1}{f} $$

ここで、z’は像距離 (像面から像面側最終レンズまでの距離)、Zは物距離 (物体面から物体側最終レンズまでの距離)、fはレンズの焦点距離です。この公式は、レンズの厚みが無いと仮定した理論式であり、物像の各距離の関係を表します。焦点距離の値が決まると、物距離 (作動距離) が増加すると像距離は減少します。

平凸レンズや両凹レンズのような単レンズの場合、この公式は物距離や像距離が既知の時のレンズの適切な焦点距離を決定するのに便利です。しかしながら、マシンビジョンシステムにおいて多くのレンズ素子で構成されたレンズ (Figure 1のような) では、この式ではいくつかの点で条件不足になります。実視野が公式の変数に含まれておらず、またマシンビジョン用レンズの像距離を計測することが現実的ではないため、焦点距離を導くことが不可能になります。

倍率に関する式 2を用いて、

(2)$$ m = \frac{z'}{z} = \frac{h'}{h} $$

ここで、h’とhはそれぞれ像面のサイズ (通常はセンサーサイズ) と実視野のサイズです。式1はより有益な形の式 3に変換できます。

(3)$$ h = h' \left( \frac{z}{f} - 1 \right) $$

式 3は、実視野やセンサーサイズといった基本パラメータが既知の時にどの焦点距離を持つレンズがアプリケーションに対応するかを迅速かつ容易に解決する方法を提案します。

Figure 1と2は、式 3に焦点距離の異なる複数のレンズをプロットしたもので、異なるセンサー別にY軸を分けたものです。

Figure 1:1/3型センサーと1/1.8型センサーにおけるレンズの焦点距離と実視野の関係
Figure 1: 1/3型センサーと1/1.8型センサーにおけるレンズの焦点距離と実視野の関係

 

Figure 2: 2/3型センサーと1型センサーにおけるレンズの焦点距離と実視野の関係
Figure 2: 2/3型センサーと1型センサーにおけるレンズの焦点距離と実視野の関係

これらのプロットは、使用するカメラが既に決まっている場合に、マシンビジョンレンズの適切な焦点距離を決定するのに役立ちます。X軸に沿って必要となる作動距離と (使用するセンサーサイズに応じた) Y軸のおおよその大きさを目で追い、両軸が座標面のどこで交わるかを確認します。その交点に最も近い焦点距離のレンズが選定条件に最も近く、ここを起点として必要となるレンズの選定を絞っていきます。

加えて、これらのプロットはマシンビジョンレンズにおける固定焦点レンズの重要なポイントも幾つか示しています。まず、より長い焦点距離のレンズは、光学設計上、最短作動距離 (至近撮像距離) が長くなります。レンズとカメラの間にスペーサーを加えることで、作動距離をより短くしていくことは可能ですが、画質は最終的に低下します (詳細はレンズ用スペーサーやシム、エクステンダーレンズを参照)。次に、同じ焦点距離のレンズでは、より大きなセンサーを使用する方が実視野のサイズが大きくなります。例えば、作動距離を350mmにしてf=12mmレンズを?型センサーに使用すると約370mmの実視野になりますが、1型センサーを使用すると、同じ作動距離条件で実視野が530mmになり、43%分増加します。最後に、グラフのプロットにはそれぞれの焦点距離の間にギャップがあり、通常の市販レンズで全ての条件に対応することができないという点です。例えば、2/3型センサーで利用可能な市販レンズの中に、600mmの作動距離で525mmの実視野を実現できるものはありません。この条件に最も近いf=8.5mmのレンズをおおよそ510mmの作動距離で用いた時にその実視野サイズが実現できます。

これらのプロットは、どのレンズがそのアプリケーションにベストなのかの選定範囲を絞る最初のステップとなります。しかしながら、これらのプロットではイメージングレンズの画質やディストーション、周辺光量比やその他の重要な性能に関する答えとはなりません。あくまで実視野とセンサーサイズの関係を示しただけのものです。レンズの選定についての更なる情報は、解像力に基づくレンズの選定をご覧ください。

 

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