テレセントリックレンズ:デザインに関するトピックス
Edmund Optics Inc.

テレセントリックレンズ:デザインに関するトピックス

著者: Gregory Hollows, Nicholas James

本ページはイメージングリソースガイドセクション5.4です

これまでのセクションでは、レンズの種類をテレセントリックレンズと非テレセントリックレンズの2つのレンズ製品群に大別してきました。しかしながら、テレセントリシティには、入射瞳と射出瞳の位置に応じて、物体側と像側の2つのデザインに分けることができます。光学系の瞳は一般的に開口絞り上に位置しますが、マシンビジョン用レンズの場合は、開口絞りを筐体中に組み込み、その前後を個々のレンズ素子で挟み込む構成にしています。この時、入射瞳は像空間側に出来上がる開口絞りの虚像、対する射出瞳は物空間側に出来上がる同絞りの虚像です。非テレセントリックレンズの入射瞳と射出瞳の関係をFigure 1に図解しました。

A Machine Vision Lens with Entrance and Exit Pupils located within the Lens
Figure 1: レンズ内に入射瞳と射出瞳が位置する典型的なマシンビジョン用レンズ (固定焦点レンズの大半はこれに該当する)

物体側テレセントリシティ

マシンビジョンレンズメーカーが自社の製品を単に「テレセントリックレンズ」としか呼んでいない場合、その多くは物体側テレセントリックレンズのことを指します。物体側テレセントリックレンズは、物体が前後 (奥行き)方向に移動する時、その結像サイズにも変化を与える要因となる視差エラー (perspective error)を取り除き、ビジョンシステムの計測精度を改善させます。Figure 2に図示したように、入射瞳位置が無限遠にある時、そのレンズを物体側テレセントリックと呼びます。

A Lens which is Object Space Telecentric, with the Entrance Pupil projected to Image-Side Infinity
Figure 2: 物体側テレセントリックは、入射瞳が物空間側に無限遠に位置する

光学設計上は、前側レンズ群の焦点上にシステムの開口絞りを配置することで、物体側テレセントリック光学系を構築できます。入射瞳が無限遠に位置すると、実視野サイズが一定となり、画角を一切持たなくなります。システムの実視野サイズを決定する主光線が開口絞り上で光軸と交差し、また入射瞳上でも交差するため、その瞳が無限遠にある場合は主光線が光軸と平行になり、画角がゼロになります (Figure 3参照)。またこれとは対照に入射瞳がレンズから有限距離に位置する場合は、Figure 4の非テレセントリックレンズの光路図で示したように、主光線が光軸と平行ではなくなります。

An Object Space Telecentric Lens, where the Chief Rays are all Parallel to the Optical Axis in Object Space
Figure 3: 物体側テレセントリックは、主光線が物空間側で全て平行になる。実視野の大きさを決める主光線が光軸と平行になるため、物体面がどこに位置していようと、実視野寸法が変わらないことに注目
The Entrance Pupil’s location is where the Object Space Chief Ray crosses the Optical Axis
Figure 4: 非テレセントリックレンズデザインの場合、物空間側の主光線が光軸と交差する場所に入射瞳がくる

テレセントリックが物空間側だけにあるレンズは、絞り後側のレンズ群に移動機構を設けることで、レンズにピント調整機能を追加することができます。これによって、システムの作動距離を可変にすることができます。また同レンズ群を倍率調整に利用したり、レンズに対するセンサー位置を移動させて若干の倍率シフトを与えて、変倍仕様も設計することができます。但し倍率を一旦セットしてしまえば、実視野内の倍率は引き続き一定を保ち、テレセントリックレンズに対して期待する高い計測精度を維持します。

テレセントリックが物空間側だけにあるレンズは、大判イメージセンサーへの対応もより容易にします。より小型化を重要視する場合でも、物体側デザインは像空間側において光線が画角を持つことを許容し、センサー面に最も近くに位置するレンズの大きさをセンサーサイズよりも大きくする必要性がなくなるため、有利に働きます。

像側テレセントリシティ

物体側テレセントリシティが入射瞳の物空間側での位置で規定されるのに対し、像側テレセントリシティは像空間側の射出瞳の位置で規定されます (Figure 5参照)。

A Lens which is Image Space Telecentric, with the Exit Pupil projected to Image Space Infinity
Figure 5: 像側テレセントリックは、射出瞳が像空間側に無限遠に位置する

物空間側がテレセントリックなレンズでは、物体の位置によって倍率が変化しないのと同様、像空間側がテレセントリックなレンズは、センサー面の位置によって倍率が変化しません (Figure 6参照)。しかしながら、カメラ筐体に対するセンサー位置公差が像側テレセントリックレンズを用いるほどでないほど小さな場合、最適センサー面からの少しの位置ずれによって、同一レンズを用いた2つのシステム間の倍率に違いをもたらすことはありません。

An Image Space Telecentric Lens, where the Chief Rays are all Parallel to the Optical Axis in Image Space
Figure 6: 像側テレセントリックは、主光線が像空間側で全て平行になる。像高の大きさを決める主光線が光軸と平行になるため、センサー面がどこに位置していようと像高が変わらないことに注目

像側テレセントリックレンズは、センサーエリア全体に対してどの光線も垂直に入射するため、放射量のコサイン4乗則のロールオフ (セクション 4.2のセンサーへの周辺光量 – ロールオフ (周辺減光)と口径食に詳細を解説)の影響を受けません。これは、レンズ設計上で口径食が生じない、より均一な周辺光量比特性を持つ画像の取得を可能にします。

像側テレセントリシティは、テレセントリックレンズ固有の物ではありません。固定焦点レンズに代表される従来からあるレンズにも規格化されることがあります。市場に流通する大抵の固定焦点レンズは、像側テレセントリックにはデザインされていませんが、テレセントリシティを実現するために、追加のレンズ素子が通常は必要になります (当然コストアップに繋がります)。この追加レンズ素子は、使用するセンサーサイズに依存してかなり大きな直径のものになることもあります。像空間側がテレセントリックな固定焦点レンズの場合、通常はその旨が製品資料に記載されています。

両側テレセントリシティ

物体側テレセントリシティが、従来のレンズと比較してゲージング精度向上に相当有益であるのに対し、物空間と像空間のどちらもがテレセントリックな両側テレセントリックレンズを用いることで、更なる精度向上を図ることができます。像空間と物空間テレセントリシティの原理そのままに、両側テレセントリックレンズは、入射瞳と射出瞳の両方ともが無限遠に位置しています (Figure 7参照)。

A Doubly Telecentric Lens, with the Entrance and Exit Pupils projected to Image and Object Space Infinity
Figure 7: 両側テレセントリックは、入射瞳と射出瞳が各々物空間側と像空間側に無限遠に位置する

両側テレセントリックレンズは、物体やセンサー位置のシフトがあっても実視野の大きさに全く影響を与えることなく、またコサイン4乗則のロールオフの影響も受けないことから、最も精度の高い種類のテレセントリックレンズと言えます。

Figure 8は、固定焦点レンズ、物体側テレセントリックレンズ、両側テレセントリックレンズの3種類のレンズの比較で、作動距離の名目値からの変化量(単位はmm)をX軸に、また実際の値からの寸法的誤差の相対百分率をY軸にプロットしています。

Plot comparing three different Types of Lenses
Figure 8: 3種類の異なるレンズ (固定焦点レンズ、物体側テレセントリックレンズ、両側テレセントリックレンズ)の性能比較。作動距離が変化した時の寸法誤差への影響を表す

グラフから分かる通り、両側テレセントリックレンズは3種類の中で最も高い精度があり、作動距離が4mmシフトしても0.2%未満の誤差しかありません。最高の精度と精密性を求めるアプリケーションには、両側テレセントリックレンズが用いられるべきです。

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