センサーへの周辺光量 – ロールオフ (周辺減光)と口径食

センサーへの周辺光量 – ロールオフ (周辺減光)と口径食

本ページはイメージングリソースガイドセクション4.2です

 口径食 (イメージングレンズの縁を通る光線が物理的事由に遮られる現象)やロールオフ、周辺光量といった問題を評価し理解するために、センサーサイズやセンサーフォーマットを考える必要があります。以下の大要に加え、センサーやセンサーフォーマットに関する更なる情報は、マシンビジョンアプリケーションにおけるカメラセンサーの理解に解説しています。

Roll-Off is the Decrease in Relative Illumination
Figure 1: ロールオフは、口径食が原因ではなく、放射則によって生じるフィールド内での周辺光量比の減少です。

センサーとレンズを一致させる

 時折持ちあがる問題の中に、センサーサイズに対するイメージングレンズの対応能力の問題があります。レンズデザインに対して使用するセンサーのサイズが大きすぎる場合、結果として得られる画像は、視野の周辺に向かうほど暗くなっているか、或いは周辺部の画像が全く存在しないかのいずれかです。この現象は、口径食によって引き起こされます。システム解像度に対する要求が高くなると、センサーの画素サイズをより小さくするか、或いはセンサーサイズ自体をより大型化していくかのどちらかの検討を始めます。MTF回折限界に関するセクション (セクション 3.2 & 3.1)で詳細を解説した通り、画素サイズの小型化への流れは、物体の真のディテールを解像する光学的能力に関係した諸問題を引き起こします。この問題や、現在のセンサー技術が引き起こしたS/Nや感度に関係した問題は、センサーサイズを大型化していくきっかけとなり、適切なレンズを使用しない限り生じる口径食やロールオフといった新たな問題を引き起こしています。

周辺光量比

 周辺光量比曲線は、イメージングレンズの口径食やロールオフといった現象を再現する方法です。センサー面において最大の明るさが得られる地点を100%として、センサーの全ての地点における明るさの度合いをその相対比率で表わします。口径食やロールオフは、周辺光量に影響を与える2大要素です。曲線の一例をFigure 2に紹介します。この曲線の読み方に関する説明は、レンズ性能曲線で解説しています。

 Figure 2の曲線中の青線は、レンズの絞りを最大開放にして、F1.4に設定した時のものです。このレンズでは、2/3型センサーのコーナー部での光量レベルが57%の周辺光量になることがわかります。同じ条件下で、½型センサーのコーナー部での光量レベルは72%です。センサーサイズを小さくすると、周辺光量は改善します。またFナンバーを高くすれば、周辺光量は改善します。この改善は、レンズに口径食が生じるまで続き、口径食が生じる直前での高Fナンバー時においては、周辺光量はほぼ均一の明るさになります。レンズのFナンバーを高くしていっても、イメージサークルサイズは通常増えることはありません。特定センサーサイズに向けてデザインされたレンズというのは、Fナンバーをステップダウンさせても、それより大きなセンサーサイズには有効に機能しないのが普通です。

 ロールオフは、レンズの絞りをステップダウンしていっても引き続き起こります。レンズに入る光線の入射角度に関連していて、レンズを通過する光線の本数には関係していないためです。レンズの多くは、視野中心部で最も明るく、周辺に向かうに従い暗くなっていく、或いは明るさほぼ変わらないといった照度分布を持っています。イメージサークルに対して周辺光量が徐々に増えていくといったことは非常に稀なケースですが、このケースは瞳補正に関連します (本テキストでは説明を省略します)。

Relative Illumination Curve
Figure 2: X軸にイメージセンサーフォーマットを記した周辺光量比曲線

レンズ内の口径食 

 口径食は、イメージングレンズを構成する個々のレンズの縁や機械的絞りによってレンズ系の外側を通る光線が遮られ、センサーに最終的に辿り着くことができない結果起こります。この光線の遮断は、意図的にも偶発的にも行え、また場合によっては回避不能であったりもします。口径食の現象は、低Fナンバー設定時や短い焦点距離のレンズ、或いは低コストで高解像力を実現する使命を持ったレンズに多く見られます。

 Figure 3は、同じf=16mmのレンズを異なるFナンバー設定 (F1.8とF4)で使用した時に生じる遮光の様子を表わします。Figure 3aでは、遮られた光線を赤丸で図示しました。図をご覧の通り、光線の一部は、レンズ系内の全ての光学素子を通過することなく、途中で遮られてしまっています。対するFigure 3bでは、この現象が生じていません。Figure 3aの口径食は、光学素子の直径の制限や、一部の光線を遮ることで迷光の透過を遮断するなどの幾つかの理由が考えられます。何か目的があって口径食が生じるようレンズ系をデザインし、レンズの全体性能を改善したり、或いはコストを削減したりするといったことがあります。

A 16mm Lens Design at f/1.8 and f/4
Figure 3: 16mmレンズデザインをF1.8 (a)とF4 (b)で設定した時の光路図: F1.8では口径食が生じ、光線の一部がレンズの縁によって通過を遮られている

口径食で性能を高める (口径食の選択) 

 口径食は、イメージサークル全体にわたりレンズデザインの解像力を最大化するために活用することがあります。画像周辺部を形成する光線をセンサー上の所望の場所に向けるといったことは難しいため、物体のより細かい部分を画像の中心部ではなく、周辺部で再現することは通常難しくなります。また本来入射すべき画素ではない間違った画素に入射する光線は、その場所での画質を低下させます。これを避けるための一つの方法は、システムからその光線を取り除いてしまうことです。それらの光線がセンサーに届くことがなければ、その場所での画質は低下することがありません。なおこの光線を取り除くことは、周辺光量を低下させることに繋がります。

画素レベルでの口径食の効果:画素が大きい場合

 Figure 4は、センサーのコーナー部にある画素に入射する光線の図解で、F1.4 (a)とF2 (b)の異なるFナンバー条件でシミュレーションしています。Figure 4aでは、一部の光線が隣接する画素に入射してしまっているため、画質やコントラストを低下させています。この時、Fナンバーを高く設定して口径食を作り出せば (Figure 4b)、隣接する画素に入射してくる光線がセンサーに入るのを防ぐことができます。Figure 5は、この口径食による効果をセンサー中心部で図解しています。しかしながら、画素サイズが大きい場合は、Fナンバーを変更したとしても、全体画質への効果はさほど高くありません。

 製造上の公差が入射光線の制御に悪い影響を及ぼし、画質を低下させてしまう場合、口径食を意図的にレンズデザイン内に入れることがあります。レンズの製造上の公差が緩いほど、画質を低下させる影響が高くなってしまいますが、公差を厳しくすることは、製造コストを上げてしまうことから実践的でない場合もよくあります。製造コストと画質維持間のバランスを取っていかなければなりません。コストが主要ファクターになる場合、実視野全体にわたり解像力を維持していくのに口径食を意図的にデザインに取り入れる必要があります。またそれを行うことで、照度分布に関する別の作用があります。レンズデザイン内に口径食を取り入れる場合、次の2つの方法があります。一つは、個々のレンズ玉の有効径を意図的に決めて軸外光線がレンズ系を通過することを厳しく取り締まること。もう一つは、機械的な絞りを中に入れて同光線を遮ることです (Figure 8a参照)。

画素レベルでの口径食の効果:画素が小さい場合

 Figure 6と7は、画素サイズを半分に減らして解像度を4倍に高めています。本例では、Fナンバーを上げることによる口径食の効果が著しく、センサー全体にわたる性能が改善されます。画像コーナー側において性能の改善が少しだけしか得られなかった前例とは大きく異なります。Figure 4~7までの全ての図は、一般的なデザインの対応能力で、その低下した性能には製造公差による影響を加味しておりません。公差を含んだ場合、コストが重要視されるケースでは口径食の必要性がより明白になります。


Figure 4: センサーコーナー部の画素に入射する光線 (F1.4 (a)とF2 (b)の設定時): Fナンバーを高く設定すると口径食を作り出し、Figure 4aで見られた隣接する画素に入射する光線がセンサーに入るのを防ぐことができる
Light Rays incident on Pixels in the Center of an Image
Figure 5: センサー中心部の画素に入射する光線 (F1.4 (a)とF2 (b)の設定時):どちらの例においても全ての光線が所望の画素に入射していることから、Fナンバーを高く設定しても画質に何の効果も生み出さない

Figure 6: センサーコーナー部の画素に入射する光線 (F1.4 (a)とF2 (b)の設定時): Fナンバーを高く設定すると口径食を作り出し、隣接する画素に入射する光線がセンサーに入るのを防ぐことができる
Light Rays incident on Pixels in the Center of an Image
Figure 7: センサー中心部の画素に入射する光線 (F1.4 (a)とF2 (b)の設定時):Fナンバーを高く設定すると口径食を作り出し、隣接する画素に入射する光線がセンサーに入るのを防ぐことができる

口径食のレンズデザイン別効果 

 Figure 8は、f=12mmの標準的性能のレンズデザインの周辺光量比曲線とMTF曲線です。Figure 8aの光路図で、光軸上に像を結ぶ光束 (青線)と、コーナー部に像を結ぶ光束 (緑線)のサイズ的違いに着目してください。このサイズ的違いは、選択的口径食の多さ少なさから生じます。この口径食によって生じる明るさの低下は、画像周辺部の方が中心部よりも更に大きくなります (Figure 8b)。但し口径食によって、材料や製造公差に伴うコストを最小化しながら、低価格で妥当な性能を保つ効果を生み出します。

 Figure 9のレンズは、超高解像力性能を有するf=12mmのレンズデザインの周辺光量比曲線とMTF曲線です。フィールド全体にわたる光束は、口径食の生じているレベルが少ないため、青線、緑線、赤線のどの光束もおおよそ均等なサイズになっています。センサー全面にわたる周辺光量比は、Fugure 8のレンズデザインに比べて遥かに均等に近くなります。本例のレンズは、コスト的に高い硝材を用いてより厳しい製造公差でデザインされたもので、口径食をデザイン内に取り入れて性能を改善することなく、画像全体にわたる性能を高次に維持することができます。このような超高解像力レンズを使用する場合のトレードオフは、標準的デザインのレンズに比べて大分高価になってしまうことです。

A Standard 12mm Lens Ray Path
A Standard 12mm Lens Relative Illumination Curve and MTF Curve
Figure 8: 標準12mmレンズの光路図 (a)、周辺光量比曲線 (b)、MTF曲線 (c)
A Ultra-High Resolution 12mm Lens Ray Path
A Ultra-High Resolution 12mm Lens Relative Illumination Curve and MTF Curve
Figure 9: 超高解像力12mmレンズの光路図 (a)、周辺光量比曲線 (b)、MTF曲線 (c)

照明のロールオフ 

 最も単純な構成の場合、所定のイメージサークルに対して口径食がない時のレンズの最大輝度は、像空間内の主光線角度のコサインの4乗の大きさで制限されます。これは、照明のコサイン4乗則として知られます。Figure 10に、像側中心と同コーナー側の主光線を各々示します (赤線で図示)。


Figure 10: イメージングレンズのレイアウト: 画像中心部に像を結ぶ光束 (青線)と同コーナー部に像を結ぶ光束 (緑線)の各々の主光線を赤線で図示。この赤線間の角度がロールオフを推量するのに用いられる。

 ロールオフは、アプリケーションの多くにおいて問題となることは通常ありませんが、主光線角度が非常に大きくなる場合には問題となる場合があります。特に大判センサーやラインセンサーを利用したアプリケーションや、視野が広角な (焦点距離が短い)アプリケーションではその傾向が高くなります。Table 1は、角度が大きくなるとロールオフがどれだけ起きるかを紹介した表です。15°の角度では、画像の中心からコーナーにかけた周辺光量の減少は13%ほどだったのに対し、角度が2倍になると、44%近く減少するのがこの表からわかります。ロールオフは、焦点距離が短く、実視野の大きいアプリケーションにおいても考慮していかなければならない問題です。この場合、使用するセンサーサイズの問題ではなく、像空間側の主光線角度の大きさが問題となります。

 ロールオフを補正するための一つの方法は、レンズを像側テレセントリック光学系にデザインすることです。これを行うことで、主光線間の角度差が0°となり、均一な明るさを実現できます。別の方法は、検査対象物体側の照明を意図的に不均一な明るさにすることです。検査対象物の端部近くを照らす照明器を追加装備したり、レンズの対物側先端部にアポダイジングフィルターを加えることで、ロールオフを緩和することができます。

主光線角度コーナー部での最大周辺光量レベル
98.5%
10° 94.0%
15° 87.1%
30° 56.3%
45° 25.0%
60° 6.3%

Table 1: 画像コーナー部での主光線角度と周辺光量比の関係 (画像中心部の光量を100%とした場合)

ロールオフとマイクロレンズ 

 センサーの多くには、各画素に光を効率よく入射させるためのマイクロレンズが使われています。他の全てのレンズと同様、マイクロレンズには最も効率よく機能するための許容入射角があります。光の入射角がこの許容角度より大きくなると、各画素の光電センサー部 (Active Area)に入る光量が減少します。この問題に対処するため、レンズの多くは像空間側の主光線角度を5~7°程度にして設計されているようです。Figure 11aは画素上に配置されたマイクロレンズのイラストです。Figure 11bとFigure 11cは、マイクロレンズに対して垂直入射と斜入射で各々焦点を結ぶ様子を示します。垂直入射の図は、センサーの中心部に配置された画素の状態を表わしています。この画素の位置では、全ての光束が画素の光電センサー部 (Active Area)に焦点を結んでいます。これに対し、斜入射の図では全ての光束が光電センサー部に入るわけではありません。これは、レンズで規定される周辺光量比曲線を更に低下させる結果につながります。

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