ケーススタディ / 医療資源が限られた環境で早産児をスクリーニングするための低コスト携帯型眼底カメラ
ケーススタディ:
Teo Kakabadze、Samer Marmash、Clin Vadakkal Shaiju、Alisha Sankhe
Team Retinex, Rice University | retinex.eye@gmail.com
未来を支えるのは、広く普及可能なスクリーニングです。
世界では毎年、約1,500万人の赤ちゃんが早産で生まれています。世界各地で新生児医療が向上したことで、特にこれまで早産児の生存が難しかった地域でも、より多くの赤ちゃんが生存できるようになりました。その結果、かつては高所得国以外ではまれだった未熟児網膜症(ROP)が、現在では世界的に小児失明の主な原因の一つとなっています。ROPは、早産児の網膜における血管の異常増殖によって引き起こされます。重症の場合、これらの血管が網膜を牽引して網膜剥離を引き起こし、永久的な失明につながることがあります。ROPはレーザー治療が可能ですが、適切な時期に発見することが不可欠であり、通常は発達上重要な時期から数週間以内に発見する必要があります。それを過ぎると、損傷は不可逆的になります。
ケニアで行われた病院ベースの研究では、スクリーニングを受けた早産児の41.7%にROPが認められました1。これは高所得国と同程度の有病率ですが、スクリーニングを行うためのインフラがほとんど整っていない環境で生じています。サハラ以南のアフリカを研究する研究者らは、今後10年間にROPが大規模に流行する可能性を警告しています。2 問題は認知度ではなく、医療へのアクセスです。私たちが開発する携帯型眼底カメラ「Retinex」は、専門医のいる高次医療機関で行われている眼底スクリーニングを、新生児のベッドサイドでも行えるようにすることを目指しています。これにより、眼科医や眼底撮影装置が不足している地域でも、より早期の介入が可能になります。ROPスクリーニングに用いられる標準的な装置であるRetCamなどの広角眼底カメラは、125,000ドル以上します。3 操作には訓練を受けた眼科医が必要ですが、人口5,500万人を超えるケニアには眼科医が約115人しかおらず4、その半数以上がナイロビに集中しています。首都以外では、眼科専門医療へのアクセスが極めて限られています。装置がある場合でも共同利用されており、眼底カメラを所有する病院でも、1台を複数の医療機関で共有することがあります。ROPスクリーニングのもう一つの標準的な方法である倒像鏡検査には、さらに確保が難しい専門医による高度な手技が必要です。ケニアや同様の状況にある多くの国では、大多数のNICUでROPスクリーニングが実施されておらず、多くの早産児が不可逆的な視力喪失に至る前に眼底スクリーニングを受けられない可能性があります。看護師がベッドサイドで眼底撮影を行えるRetinexは、こうした医療アクセス上の重大なギャップを埋め、十分な医療サービスを受けられない地域の早産児の長期的な予後改善に貢献できる可能性があります。
医療資源が限られた病院向けに、看護師が操作できる携帯型眼底スクリーニング装置を設計。
Team Retinexのミッションは、医療資源が限られた病院でも使用できる、低コストの携帯型ROP眼底スクリーニング装置を設計することです。専門的な訓練を受けていない看護師でも操作でき、500ドル未満のコストで、持ち運んでベッドサイドで使用できるほどコンパクトな装置を目指しています。
このプロジェクトは、ライス大学の工学設計コース「EDES 200」を通じて進められており、以前の学生チーム(IRIS)が開始した取り組みを引き継いでいます。大学1年生2名と2年生2名で構成される現在のチームは、既製部品を使用し、総製作費を200ドル未満に抑えながら、今学期に最初の機能試作機を完成させました。
新生児の眼底撮影には、乳児の小さな瞳孔、角膜反射、熱安全性の制限、短い作動距離、撮影中の患者の動き、携帯性の要件、さらに医療資源が限られた環境で専門家以外が操作する必要性など、複数の難しい技術的制約が同時に存在します。本装置は、こうした制約の中で画質、安全性、操作性、低コストでの製造性のバランスを取れるように設計されています。
私たちのソリューションは、照明、拡大、撮影、制御という4つの主要なサブシステムで構成される円筒形の手持ち式撮像装置です。新生児の眼底撮影特有の制約に対応しながら、装置をコンパクトにし、部品点数を抑えています。この用途では、高い画質、安全な光照射、臨床環境での使いやすさが求められます。
早産児の網膜を照明する際には、相反する複数の制約を考慮する必要があります。乳児の瞳孔を通して眼底を撮影し、眼底の微細な血管構造を分解できるだけの十分な光量が必要です。一方、発熱する光源を乳児の顔の近くに配置することはできません。また、角膜や水晶体からの鏡面反射を適切に抑制しなければ、観察したい構造そのものが白飛びして見えなくなってしまいます。
本装置の照明システムでは、高出力の暖色LEDを光源として使用しています。光は、Edmund Optics®から提供されたガラス製光ファイバーライトガイドを介して撮像ヘッドへ導かれます。光ファイバーケーブルによって、発熱するLEDを装置前面から物理的に離すことができるため、乳児の顔に接する光出射端を低温に保つことができます。撮像ヘッドでは、撮像軸と一致する同軸配置によって光を光路へ入射させます。これにより、画像のコントラストを低下させる角膜や水晶体からの反射を大幅に抑えることができます。正確な光量調整を行うため、PWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)による輝度制御を設計に組み込んでおり、撮影中にハンズフリーで操作できるフットペダル式インターフェースも現在開発中です。
Edmund Opticsの光ファイバーライトガイドは、本装置を実現するうえで重要な役割を果たしました。この品質とコア径を備えた光ファイバーによる光伝送によって、低コストで同軸設計を実用化できます。装置全体をコンパクトに保ちながら、瞳孔を効率よく照明するのに十分な光スループットを確保できます。このライトガイドがなければ、安全な熱分離と効果的な同軸照明を両立するために、より複雑な光学設計、あるいは大幅に大型化した装置が必要になります。
装置前面の28ディオプター眼底観察用レンズによって、網膜の拡大実像を形成します。これは標準的な倒像鏡検査で使用されるものと同じタイプのレンズで、装置のコンパクトな構成内で60°を超える視野を得られることから採用されました。ROPの包括的な診断に必要な120°を超える視野を実現することが、今後の改良における重要な目標です。現時点では、撮影範囲を一部重複させた複数の画像をつなぎ合わせることで、この範囲をカバーする計画です。
画像取得には、モーター駆動オートフォーカスと露出調整機能を備えたArducam OwlSight 64MPカメラを使用しています。この用途では高い画素数が重要です。初期ROPに特徴的な血管の拡張や蛇行、隆起形成などの血管変化を検出するには、特にこの撮像倍率において、低解像度のセンサーでは捉えられない微細な網膜構造を分解する必要があるためです。
Raspberry Pi Zero 2Wが、カメラの露出とフォーカス、LEDの輝度、Retinex Screening AppとのUSB通信など、装置のすべてのサブシステムを管理します。このアプリでは、位置合わせ用のライブカメラ映像、ワンタップでの画像撮影、整理された画像ギャラリー、患者データ管理などの機能を提供します。さまざまな医療環境での導入を想定しているため、多言語にも対応しています。短時間のオリエンテーションを受ければ、画像撮影の経験がない看護師でも操作できるようにインターフェースが設計されています。
USAF 1951解像力ターゲットを用いた試験では、試作機は35.9lp/mm(1mmあたり35.9ラインペア)を分解しました。眼科用イメージング機器に関するISO 10940規格では60lp/mmのしきい値が規定されていますが、今回得られた解像力でも、Zone Iのplus diseaseに特徴的な血管の拡張や蛇行を検出するには十分であると見込まれています。Zone Iは網膜の最も中心部に位置し、最も重症なROPが現れる領域であるため、視力喪失のリスクが最も高く、早期診断において最も重要な対象となります。試作機では、1枚の静止画像から60~80°の視野が得られ、この領域をカバーするのに十分であるため、臨床上最も緊急性の高いROP症例を検出できます。疾患の完全な病期分類に必要な120°の眼底撮影範囲は、今後の改良で複数画像をつなぎ合わせることで実現する予定です。200ドル未満で製作した最初の学期の試作機で、臨床的に意味のあるこの診断能力を実現できたことは、今後の開発と性能向上に向けた強固な基盤となります。
このプロジェクトは今後もライス大学の学生設計チームによって継続され、次の段階では、機能する工学試作機から臨床現場で使用可能な眼底スクリーニングシステムへの発展を目指します。
本プロジェクトを通じて、リソースと支援をご提供いただいたスポンサーのHarrell Huff氏、およびライス大学Oshman Engineering Design Kitchenに感謝いたします。また、部品をご提供いただいたEdmund Optics、設計に関して臨床的な観点から助言をいただいたEmmanuel Chang博士、本プロジェクトの基礎となる研究に取り組んだEDES 120チーム(IRIS)、そして指導教員のOden博士、Hunter博士、Ghosn博士に深く感謝いたします。
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