同軸落射照明の考察
Edmund Optics Inc.

同軸落射照明の考察

 同軸落射照明は、マシンビジョンレンズの光路内に照明を組み込んだ独特な構成の照明法です。通常は、ファイバーライトガイドかLED光源をビームスプリッターと併用して組み込んでいます。同軸落射照明は、拡散同軸照明と比較してもそれほど設置スペースを必要とせず、システム内に組み込むことも比較的容易です。とはいえ、照明方法の違いに配慮していくこともまた重要です。同軸落射照明は、主光線が物空間内の光軸に対して平行になる性質があり、指向性がとても高いのが特長です。同軸落射照明がテレセントリックレンズに広く組み込まれる理由の一つがそれです (Figure 1参照)。これに対し、拡散同軸照明は、その名が示す通り光を四方八方に拡散照射するため、物面や像面上でのふるまいは異なる性質となります。

In-Line Illumination within a Telecentric Lens
Figure 1: テレセントリックレンズ内に組み込まれた同軸落射照明系

 同軸落射照明を明視野照明と比較すると、得られる画像の違いの大きさがわかります。Figure 2は、透明なガラス基板上にテストパターンをクロム蒸着したポジ型のUSAF 1951 ターゲットを2つの照明法を用いて映した時の各々の画像です。

Chrome on Glass USAF 1951 Resolution Target with Bright Field Illumination and In-Line Illumination
Figure 2: ガラス基板上にクロム蒸着したポジ型のUSAF 1951 解像力ターゲットを明視野照明 (Figure 2a)と同軸落射照明 (Figure 2b)で照明した時の画像

 2種類の照明法の違いにより、正反対の明暗コントラスト画像になることがすぐにわかります。ターゲット内の不良部分が明視野照明を用いることでより明白に現れますが、これはアプリケーションに応じて正にも負にも働きます。興味深いのは、テストパターン自体 (クロム蒸着)が持つ高い反射性によって、同軸落射照明時の画像の方が明視野照明時の画像よりも10%程高いコントラスト性能を得られることです。その理由を以下に説明します。

同軸落射照明を用いる時

 同軸落射照明の使用を検討する際は、どこを明るく映し出し、どこを暗くするのかを正確に把握することが重要です。同軸落射照明は、照明光路上の光線の性質により、半導体ウエハーやCCDなど、正反射体や正反射に近い物体を検査するのに効果的です。同軸落射照明を搭載したテレセントリックレンズと、同照明を搭載しない同一レンズによる2台のレンズ構成で、明視野照明 (リングライト使用)と同軸落射照明の異なる照明法を用い、同一のCCDサンプルを検査しました。得られた画像は、Figure 3の通りです。

Comparison of Brightfield Illumination with In-line Illumination
Figure 3: 明視野照明 (左)と同軸落射照明 (右)の画像比較

 同軸落射照明は、CCD端部に沿って配列したワイヤー部を検査するのにより良い選択になります。ワイヤーとそれ以外のCCD部との間でより均質で高コントラストな画像を作り出します。Figure 4に図解した光路から、Figure 3のワイヤー部は明視野照明を用いることで明るく照らし、同軸落射照明を用いることで暗く映ることになります。明視野照明の場合、光線は物体で散乱して一部の光がレンズ内に入射するのに対し、同軸落射照明の場合は散乱した光がレンズに入りません。

 明視野照明の場合、リングライトから出射した光線は、物体で反射した後にレンズに入射します。反射量は、使用する個々の光源の光線出射角度やワイヤー部のCCD面に対する設置角度、またはんだ材料によって変わります。ワイヤー部の長さ方向に沿って反射量が不均一になる理由です。同軸落射照明を用いると、物体で反射した全ての光線が散乱し、ワイヤー部に当たった光線はレンズ/センサーには一切戻りません。ワイヤー部のコントラストを際立たせるには、その背景部に当たる部位のコントラストが均一になるほど、同軸落射照明が明視野照明よりもワイヤー検査にはより良い選択となります。

Table 1: 明視野照明と同軸落射照明の比較
明視野照明 同軸落射照明
ワイヤーに対し低コントラスト ワイヤーに対し高コントラスト
フェースプレート上の欠けを明るく描写 フェースプレート上の欠けを暗く描写
高コントラスト画像 構造間を一定コントラストで均一に照明 (赤枠内)

 CCDカバーガラスのディグ (窪み)やチップ (欠け)を検査する場合、同軸落射照明は最も都合の良い選択となります。なぜなら、画像全体のコントラストがより均一になるためです。同軸落射照明を用いることで暗く映るチップ (Figure 4で図解した光の散乱により起こる)は、Figure 3に紹介した通り、明視野照明を用いて得られる高コントラスト画像よりも、密な構造のCCD面の背景に対して更に高いコントラスト画像となって現れます。

同軸落射照明を用いない時

 同軸落射照明は、その多くの利点から、設置スペースの制限されたシステムに対して常に優れた選択肢になると考えられていることが多いのも事実です。結論から言うと、光学的に拡散する物体や広い実視野を求める物体に対してはベストなソリューションになりません。高い拡散性を持つ物体に同軸落射照明を用いると、物体の完全拡散 (ランバート)的性質 (どの角度から見ても拡散反射分布特性がほぼ一定)によって画像にホットスポットを作ります。これは、どの検査システムにおいても有害です。Figure 5は、木材で作られた高拡散性物体の画像で、同軸落射照明を使用した時 (写真右)と使用しない時 (写真左)の比較になります。

Comparison of Ray Paths Using Brightfield Illumination and In-line Illumination
Figure 4: 明視野照明 (左)と同軸落射照明 (右)による光路比較

 完全拡散に近い物体に同軸落射照明を用いると、実視野中央部にホットスポットが明らかに現れます。このホットスポットにより、コントラストが明らかに低下します。画像中心部で得られるコントラスト値ベースで見ると、明視野照明により得られた画像が70%程度のコントラスト性能なのに対し、同軸落射照明により得られた画像は8%程度にしかなりません。

 同軸落射照明が理想的オプションにはならない別のシチュエーションも存在します。広い実視野サイズを必要とする時、照明システムの照明範囲が問題になります。広い視野にわたって光束が広がるということは、光線束が低くなることにつながり、システム全体としてのスループットにも負の影響を及ぼします。また発光面部に欠陥のある光源の使用は、広い視野を持つ同軸落射照明システムの性能に無視できない負の影響を与えることがあります。小さな欠陥が物平面内に大きく投影されてしまうことがあるためです。

 同軸落射照明は、CCDの周辺部にあるワイヤー部を検査するのにより良い選択となります。ワイヤー部とそれ以外の部分間のコントラスト差がより高く、またより均一になるためです。Figure 2に紹介した通り、明視野照明を用いることで明るく映し出されるワイヤー部は、同軸落射照明を用いることで反対に暗く映し出されます。これは、Figure 1に示した照明の光路によるものです。明視野照明では被写体を照明した光は散乱してレンズに入射するのに対し、同軸落射照明では散乱してレンズに入らなくなります。

Comparison of Wooden Object with Brightfield Illumination and In-Line Illumination
Figure 5: 木製物体の画像比較: 明視野照明使用時 (左)と同軸落射照明使用時 (右)
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