コントラスト
著者: Gregory Hollows, Nicholas James
本ページはイメージングリソースガイドのセクション2.3です
コントラストは、物体上の所定の解像度 (周波数)において、黒が白からどれだけ区別することができるかを定量化します。「明瞭な画像」にするためには、黒のディテールは黒として映る必要があり、白のディテールは白として映る必要があります (Figure 1参照)。黒と白の情報が混ざり、中間的なグレー色になるほど、その周波数におけるコントラストはより低くなります。明るい線と暗い線間の強度の違いが大きくなるほど、コントラストはより高くなります。このことは自明かもしれませんが、大変重要な概念です。
Figure 1: コントラストの理解: 黒から白への移行が高コントラストになるのに対し、グレーからグレーへの移行はコントラストが低くなる
所定の解像度 (周波数)におけるコントラストの値は、式1を用いて算出することができます。ここで、Imaxは最大強度 (カメラを使用する場合は、ピクセルのグレースケール値 (階調)を通常使用)、Iminは最低強度を表わします:
レンズ、センサー、照明、全ての要素が画像のコントラスト性能に影響を及ぼします。いずれの要素も適切に使われずにいると、所定の解像度 (周波数)におけるシステム全体のコントラスト性能を低下させます。
レンズとコントラストの制限
レンズのコントラストは、理想的照明を前提とした際に再現される物体のコントラストの割合から一般に定義されます。解像力は、特定のコントラスト条件を元に計測しない限り、ある種無意味なものになります。解像力には、センサーの各画素上を物体の像の輪郭がシャープな推移する、いわば物体に関して完全な再現を行うことを前提にしていました。しかしながら、現実の世界ではこのケースは実際には起こりません。光の性質により、理想的に設計され、かつ製造されたレンズであっても、物体の解像とコントラストを完璧に再現することはできないのです。仮にレンズが回折限界 (回折限界で解説)で動作していても、Figure 2に図示するように、ドットの輪郭部がややボケた画像を形成します。この画像をセンサーの各画素が明暗の情報として読み取る訳ですから、システム解像力としての精度は更に悪くなり、不効率な結果になります。
Figure 2 に図示した通り、2つのドットを互いに接近した状態で配置し、それをレンズで撮像することを考えてみてください。ドット間の距離が十分に離れていれば (言い換えれば、低空間周波数であれば)、ドットの像の輪郭部には多少のボケが生じるものの、2つのドットを明白に認識できます。次に、2つのドットを接近させていくと、ドットの輪郭部のボケが互いに重なり合い始め、最終的には2つのドットを独立した物体として区別できなくなります。実際のシステムの解像力は、ドット間の空間を認識することのできるイメージングシステムの能力に依存します。仮にドット間の空間が十分に広かったとしても、レンズのコントラストが今イチで、ドットの輪郭部のボケが大きく出るのであれば、ドットの像は重なり合い、各ドットを独立したものとして解像するのも容易ではなくなります。よってシステムの解像力性能は、光の回折現象や他の光学的収差により引き起こされる像ボケや、コントラストを検出するセンサー側の能力を始めとする多くの因子に依存しています。
Figure 2: 同一レンズによって撮像された2つのドット: 上図のレンズは低空間周波数で物体を撮像し、下図のレンズは高空間周波数で撮像
コントラストに関する実例
物体のディテールを解像する能力は、コントラストを再現するレンズの能力と、利用するセンサーの画素数の両方に直接的に関連します。以下に紹介する2つの画像は、同一のテストターゲットを2つの異なるレンズで撮像した際の画像です。センサーは同じ画素数のものを使用し、センサー中央部の画像部分を捉えています。どちらのレンズのコントラストを再現する能力も、システム性能を決定付けるファクターとなります。
レンズ1は22.6%のコントラストレベルを生み出すのに対し、レンズ2は12.7%のコントラストレベルを作り出します。人間の眼には見た目で同じシステムでも、使用するレンズの違いにより実際は10%分の性能差が生じています。
なお、レンズは同一周波数時に実視野全体にわたって一定のコントラスト性能を作り出さないことに留意しておく必要があります。またレンズのFナンバーを調節することで、コントラストレベルも変化します。このことに関する詳細な解説は、Fナンバーと解像力とコントラストに関する限界: エアリーディスクをご覧ください。
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