偏光板選定ガイド
偏光の詳細については、偏光入門をお読みください。
偏光は光の重要な特性です。偏光素子は、偏光を制御して、所望の偏光状態を透過し、それ以外の状態を反射、吸収、あるいは偏向する、重要な光学素子です。偏光板のデザインにはさまざまなものがあり、それぞれに長所と短所があります。お客様のアプリケーションに最適な偏光板の選定をサポートするため、偏光板の仕様、また異なるクラスの偏光板のデザインについて解説します。
偏光板の特性
偏光板にはいくつかの主要パラメータによって定義され、その中のいくつかが偏光光学部品に特有のものになります。最も重要な特性は以下の通りです:
消光比と偏光度:直線偏光板の偏光特性は、通常、偏光度または偏光効率 P と消光比 ρpによって定義されます。光学ハンドブックで定められた形式に従って、偏光板の主な透過率をT1とT2とします。T1は、偏光板の最大透過率で、偏光板の透過軸が入射偏光ビームの偏光面と平行になるときに発生します。T2は、偏光板の最小透過率で、偏光板の透過軸が入射偏光ビームの偏光面と垂直になるときに発生します。

直線偏光板の消光性能は、通常1 / ρpで表されます: 1. このパラメータの範囲は、安価なシート状偏光板の100:1未満から、高品質の複屈折結晶偏光板の106:1までに及びます。消光比は、通常は波長や入射角によって変化するため、与えられたアプリケーションでのコストやサイズ、偏光透過率などの他の要素とともに評価される必要があります。
透過率:この値は、偏光軸方向に直線偏光された光の透過率、あるいは偏光板を通過する非偏光の光の透過率のいずれかを指します。平行位透過率は、偏光軸の向きを同じくした2枚の偏光板を通過する非偏光の光の透過率になるのに対し、直交位透過率は、偏光軸の向きを直交させた2枚の偏光板を通過する非偏光の光の透過率になります。理想的な偏光板の場合、偏光軸に平行な直線偏光の透過率は100%、平行位透過率は50%、そして直交位透過率は0%です。これは、偏光入門で解説した通り、マルスの法則で計算することができます。
許容角:許容角は、偏光板が仕様の範囲内で引き続き機能することのできる、設計入射角からの最大偏差です。ほとんどの偏光板は、0°か45°の入射角、あるいはブリュースター角で機能するようにデザインされています。許容角は、アライメントの際に重要になりますが、コリメートしていないビームを扱う場合には特に重要です。ワイヤーグリッド偏光板やダイクロイック偏光板は、一番大きな許容角があり、ほぼ90°の全角許容角のものまで存在します。
構造:偏光板にはさまざまな形やデザインがあります。薄膜偏光板は、光学フィルターと同様の薄膜です。プレート型偏光ビームスプリッターは、ビームに対して斜めに配置される薄くて平らなプレートです。キューブ型偏光ビームスプリッターは、斜面で互いを接合した2個の直角プリズムで構成されます。複屈折偏光板は、一緒に固定した2つの結晶プリズムで構成され、特定の偏光デザインによってプリズムの角度が決まります。
有効径:有効径は、複屈折偏光板にとって最も大きな制限因子になり、光学的に純粋な結晶の入手可否によって偏光板のサイズが制限されます。ダイクロイック偏光板は、製造上より大きなサイズに適しているため、入手可能な最大の有効径を持っています。
光路長:光が偏光板を伝播しなければならない長さです。分散、損傷閾値、およびスペースの制約にとって重要になる光路長は、複屈折偏光板では十分な大きさになりますが、ダイクロイック偏光板では通常短くなります。
損傷閾値:レーザー損傷閾値は、偏光板に用いられる材料とそのデザインによって決定され、複屈折偏光板が通常最も高い損傷閾値を持っています。接着剤は、レーザー損傷を最も受けやすい要素になるため、オプティカルコンタクト法を用いたビームスプリッターやエアスペース構造の複屈折偏光板は、より高い損傷閾値があります。
コスト:偏光板には、大きくて非常に純粋な結晶を必要とする高価なものもあれば、延伸加工されたプラスチック製の安価なものもあります。



| 消光比 | レーザー誘起損傷閾値 (LIDT) | 波長範囲 (nm) | 板厚 | コスト | |
|---|---|---|---|---|---|
| ダイクロイック偏光板 | |||||
|
低~中
|
低
|
400 - 700
|
とても薄い
(ポリマーフィルム) |
¥
|
|
| 高温対応偏光フィルム (XP40HT) |
低~中
|
低
|
400 - 700
|
とても薄い
(ポリマーフィルム) |
¥
|
| 高透過率 偏光フィルム (XP44) |
低~中
|
低
|
400 - 700
|
とても薄い
(ポリマーフィルム) |
¥
|
| 商用グレード 可視用偏光フィルム (XP38) |
低~中
|
低
|
400 - 700
|
とても薄い
(ポリマーフィルム) |
¥
|
| 高コントラスト 近赤外 (NIR) 用偏光フィルム |
低~中
|
低
|
400 - 1600
|
とても薄い
(ポリマーフィルム) |
¥¥
|
| 超広帯域近赤外 (NIR) 用偏光フィルム |
低~中
|
低
|
400 - 2200
|
とても薄い
(ポリマーフィルム) |
¥¥
|
| 高コントラスト プラスチック偏光板 (XP42-200) |
低~中
|
低
|
400 - 700
|
薄い (ラミネート加工)
|
¥
|
| 高コントラスト ガラス偏光板 (XP42) |
低~中
|
低
|
400 - 700
|
薄い (ラミネート加工)
|
¥
|
| 円偏光板 (CP42HE & CP42HER) |
低~中
|
低
|
400 - 700
|
とても薄い
(ポリマーフィルム) |
¥
|
| 高性能ガラス偏光フィルター |
中
|
低
|
400 - 700
|
薄い (ラミネート加工)
|
¥
|
| 枠付きマシンビジョン用ガラス偏光板 |
低~中
|
低
|
400 - 700
|
薄い (ラミネート加工)
|
¥
|
| 近赤外用ガラス偏光フィルター |
低~中
|
低
|
400 - 2000
|
薄い (ラミネート加工)
|
¥¥
|
| 広帯域偏光板 |
中
|
低
|
300 - 2700
|
薄い
|
¥¥¥
|
| UV, VIS-NIR, NIR 用高コントラスト偏光フィルター |
高
|
低~中
|
360 - 1700
|
薄い (ラミネート加工)
|
¥¥¥
|
| 中波赤外 (MWIR) 用偏光フィルター |
中
|
低~中
|
1500 - 5000
|
薄い
|
¥¥¥
|
| コーニング ポーラコア ガラス偏光板 |
中~高
|
中~高
|
630 - 1160
|
薄い
|
¥¥¥
|
| 反射型偏光板 | |||||
| ワイヤーグリッド偏光フィルム |
低~中
|
低
|
400 - 1200
|
とても薄い (フィルム)
|
¥
|
| 赤外 (IR) 用ワイヤーグリッド偏光板 |
低~中
|
低~中
|
2000 - 30,000
|
薄い
|
¥¥¥
|
| 超広帯域ワイヤーグリッド偏光フィルター |
中~高
|
低~中
|
300 - 3200
|
薄い
|
¥¥¥
|
| 高コントラスト IR ワイヤーグリッド偏光板 |
中~高
|
中~高
|
3000 - 15,000
|
薄い
|
¥¥¥
|
| 保護膜付きワイヤーグリッド偏光板 |
低
|
低~中
|
400 - 700
|
薄い (ラミネート加工)
|
¥¥
|
| UV ワイヤーグリッド偏光板 |
低~中
|
低~中
|
240 - 400
|
薄い (ラミネート加工)
|
¥¥
|
| ブリュースターウインドウ |
低
|
中~高
|
200 - 2200
|
薄い
|
¥ - ¥¥
|
| 複屈折偏光板 |
|||||
| ウォラストン偏光プリズム |
高
|
高
|
190 - 4000
|
とても厚い
|
¥¥¥
|
| ロション偏光プリズム |
高
|
高 | 130 - 4000 | とても厚い | ¥¥¥ |
| グランタイプ偏光プリズム |
高
|
高
|
220 - 2200
|
とても厚い
|
¥¥¥
|
| 薄膜偏光板 | |||||
| 超短パルスレーザー用薄膜偏光板 |
低
|
中~高
|
750 - 1090
|
薄い
|
¥¥
|
| レーザー用薄膜偏光板 |
中
|
中~高
|
355-1064
|
薄い
|
¥¥
|
| 選定ガイド:ダイクロイック偏光板 |
|---|
ダイクロイック偏光板は、所望の偏光を透過し、残りを吸収します。これは、偏光板にある異方性によって達成されます。一般的な例として、配向された高分子や伸長したナノ粒子が挙げられます。低コストのラミネート加工されたプラスチック偏光板から、精密で高コストのガラス製ナノ粒子偏光板まで、幅広いクラスの偏光板です。ほとんどのダイクロイック偏光板は、コストの割に良好な消光比を持っています。損傷閾値や対環境安定性で制限されることが多々ありますが、ガラス製ダイクロイック偏光板は、プラスチック製ダイクロイック偏光板よりもその点では優れています。ダイクロイック偏光板は、顕微鏡、イメージング、およびディスプレイアプリケーションによく見合い、非常に大きな開口が必要になる時には通常唯一の選択肢になります。
Figure 1: ダイクロイック偏光板は不要な偏光状態を吸収する
| タイプ | アプリケーション | 基板 | 波長範囲 (nm) | 消光比 | 透過率 (%) | コスト | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
|
高コントラスト ガラス偏光フィルター |
イメージング、顕微鏡、ディスプレイ、輝度調整
|
B270 & ポリマーフィルム |
400 - 700
|
10,000:1 |
25 |
¥¥¥
|
|
|
高コントラスト プラスチック偏光板 |
イメージング、顕微鏡、ディスプレイ、輝度調整 | PMMA & 高分子フィルム | 400 - 700 | 9000:1 | 単体透過率: 42 2枚平行位: 36 2枚直交位: <0.004 |
¥\¥
|
|
| 高コントラスト 偏光フィルム |
イメージング、顕微鏡、ディスプレイ、輝度調整
|
ポリマーフィルム
|
400 - 700
|
9000:1
|
単体透過率: 42
2枚平行位: 36 2枚直交位: <0.004 |
¥
|
|
| ガラス偏光フィルター |
イメージング、顕微鏡、ディスプレイ、輝度調整
|
B270 & ポリマーフィルム
|
400 - 700
|
100:1
|
単体透過率: 30
2枚平行位: 20 2枚直交位: 0.15 |
¥
|
|
| 枠付きガラス偏光フィルター |
イメージング、顕微鏡、ディスプレイ、輝度調整
|
フロートガラス
|
400 - 700
|
19:1
|
単体透過率: 30
2枚直交位: 0.15 |
¥
|
|
| 円偏光板 |
イメージング、顕微鏡、ディスプレイ、輝度調整
|
PMMA & ポリマーフィルム
|
400 - 700
|
-
|
42
|
¥\¥
|
|
| NIR用偏光板 |
NIR レーザー、LED、光通信
|
B270 & ポリマーフィルム
|
450 - 750
1000 - 2000 |
1000:1
|
30
33 |
¥¥¥
|
| 選定ガイド:薄膜偏光板 |
|---|
薄膜偏光板は、通常45度の入射角で入射ビームをs偏光とp偏光に分離する薄膜誘電体コーティングを使用します。多くは、レーザーライン波長で最善の透過/反射性能を得るために規格化されています。
| タイプ | 基板 | 波長範囲/設計波長 (nm) | 消光比 | 透過率 (%) | コスト | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 超短パルスレーザー用薄膜偏光板 | UVグレード 合成石英 |
750 - 850 |
透過型 20:1 |
Tp >85 / Ts <4 | ¥ | |
| 高エネルギーレーザーライン用偏光板 | UVグレード 合成石英 | 355, 532, 633, 1064 | 10,000:1 | Tp >98 |
¥
|
| 選定ガイド:反射型偏光板 |
|---|
反射型偏光板は、所望の偏光を透過し、残りを反射します。ワイヤーグリッド、ブリュースター角、あるいは干渉効果のいずれかを利用しています。ブリュースター角は、フレネルの公式に基づいており、s偏光のみが反射される角度です。p偏光が反射されず、s偏光が部分的に反射されるため、透過光はp偏光に富んでいます。
Figure 2: 反射型偏光板には、キューブ型ビームスプリッター、プレート型ビームスプリッター、薄膜などがあり、不要な偏光状態を反射します。
| タイプ | アプリケーション | 波長範囲 (nm) | レーザー損傷閾値 | コスト | |
|---|---|---|---|---|---|
| ブリュースターウインドウ |
レーザー共振器
|
200 - 2200
|
高
|
¥
|
|
| 広帯域プレート型偏光ビームスプリッター |
スペース/重量制約用途、低コスト & 低消光比用途、フェムト秒レーザー用途
|
250 - 1550
|
低~高
|
¥
|
|
| 広帯域キューブ型偏光ビームスプリッター |
ビームコンバイニング
|
400 - 1100
|
低~高
|
¥¥
|
|
| ワイヤーグリッド偏光板 |
厳しい環境、広帯域用途、赤外線、非平行光
|
300 - 15000
|
低~高
|
¥¥ - ¥¥¥
|
|
| ワイヤーグリッドキューブ型偏光ビームスプリッター |
広帯域用途、非平行光
|
400 - 700
|
低~高
|
¥\¥
|
| 選定ガイド:複屈折偏光板 |
|---|
複屈折偏光板は、所望の偏光を透過し、それ以外の偏光を偏向します。複屈折結晶を利用しており、その偏光によって光の屈折率が決まります。非垂直入射の非偏光は、s偏光とp偏光の屈折率が異なるため、結晶に入射すると2つの別々のビームに分かれます。ほとんどの設計では2つの複屈折プリズムを接合して構成されており、接合角度と光軸の相対的な向きによって偏光板の機能が決まります。この偏光板は、光学的に純粋な結晶が必要とされるため高価ですが、高いレーザー損傷閾値、優れた消光比、幅広い波長範囲を持っています。
Figure 3: グランテーラー偏光板のような結晶偏光板は、結晶材料の複屈折特性を用いて所望の偏光を透過し、それ以外を偏向します。

Figure 4a: グランテーラー偏光プリズム

Figure 4b: グランレーザー偏光プリズム

Figure 4c: グラントムソン偏光プリズム
| タイプ | アプリケーション | 波長範囲 (nm) | レーザー損傷閾値 | コスト | |
|---|---|---|---|---|---|
| グラントムソン |
レーザーアプリケーション、高品質イメージング、顕微鏡
|
220 - 2200
|
中
|
¥¥¥
|
|
| グランテーラー |
レーザーアプリケーション、分光
|
220 - 2200
|
高
|
¥¥¥
|
|
| グランレーザー |
レーザーアプリケーション、Qスイッチングレーザー
|
220 - 2200
|
非常に高
|
¥¥¥
|
|
| ウォラストンプリズム |
両方の偏光へのアクセスが必要な研究室での実験
|
190 - 4000
|
高
|
¥¥¥
|
|
| ロションプリズム |
両方の偏光へのアクセスが必要な研究室での実験
|
130 - 7000
|
高
|
¥¥¥
|
| レーザー切断されたポリマー偏光板と位相差板の見積りツール |
|---|
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ITOS GmbHは、Edmund Opticsの一部門で、1993年以来、ドイツおよびヨーロッパの市場にカスタムおよび既製の偏光ソリューションを提供しております。ITOS部門は、EOの偏光製造および計測能力を拡張し、より広い範囲で標準およびカスタムの偏光オプティクスをお客様に提供しております。
参考文献
- Bass, Michael, Casimer DeCusatis, Jay Enoch, Vasudevan Lakshminarayanan, Guifang Li, Carolyn MacDonald, Virendra Mahajan, and Eric Van Stryland, eds. Handbook of Optics: Geometrical and Physical Optics, Polarized Light, Components and Instruments. 3rd ed. Vol. 1. New York, NY: McGraw-Hill Education, 2010.
- Goldstein, Dennis. Polarized Light. 2nd ed. New York, NY: Marcel Dekker, 2003.



















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