レンズからセンサーへ: 情報を集めることの限界
Edmund Optics Inc.

レンズからセンサーへ: 情報を集めることの限界

著者: Gregory Hollows, Nicholas James

本ページはイメージングリソースガイドセクション4.1です

From Lens to Sensor: Limitations on Collecting Information

 理論上の性能と実際の製造上の性能間で生じる差をより良く理解するために、センサーレベルで何が起こっているかや、センサーからの出力が波長やFナンバー別にどのように変わるかを以下の例 1~3を用いて紹介していきます。下記3例は、理論上から、収差やレンズ製造上の誤差を含んだ現実世界の実例へと移行していきます。

 ご存知の通り、波長が短くなると、イメージングシステムの性能は理論上上がります。昨今では、青色LEDが小さな画素サイズを持つセンサーの性能向上にとても貢献してきています。EO ベスト・プラクティス #5の「色も大切です。」を思い返してみましょう。Fナンバーや波長によるレンズの理論的対応能力や限界を理解しておくことは、使用者が高解像度センサーの利用を最適化し、難易度の高いアプリケーションに対処するのを助長します。

例 1: 低Fナンバー時のスポットサイズと画素出力の波長別変化 (理論上)

 Figure 1aと1bは、光の回折現象 (回折限界を参照)によって生じる像ボケを例外とし、4つの異なる波長がパーフェクトに撮像された様子を表わします。レンズをF2.8で設定し、3.45μmの画素サイズのセンサーを使用した時の実視野中央部での様子です。この画素サイズはとても小さなサイズの部類に入り、多くの産業用カメラメーカーが500万画素カメラとして市販しています。Figure 1aは、波長を470nm (青)から880nm (NIR)まで段階的に上げていった時のスポットサイズの違いを表わします。Figure 1bは、レンズを用いてFigure 1aの状態で像を結んだ各スポットが、実際のセンサー出力としてどのように出力されるかを表わしています。 補足: スポットサイズが小さいものほど、より短い波長の光を用いて形成されたものです。


Figure 1: 低Fナンバー時のスポットサイズと画素出力の波長別変化

例 2: 高Fナンバー時のスポットサイズと画素出力の波長別変化 (理論上)

 Figure 2の各画像は、Figure 1と同様のものですが、レンズの絞り設定をF8に変更しています。この設定において、Figure 2aではどの波長に関わらず、スポットサイズが1画素の大きさを超えてしまい、光エネルギーの一部が隣接する画素にまで入射してしまっています。Figure 2bの実際の画素出力では、特に長波長側の880nmにおいて無視できない像ボケが生じた結果、各結像点が見分けられない状態になっています。これは、Fナンバーを変えることで引き起こされる物理現象そのもので、理論上完璧なシステムにおいても起こってしまう現象です。


Figure 2: 高Fナンバー時のスポットサイズと画素出力の波長別変化

例 3: スポットサイズと画素出力の波長別変化(収差を含んだ現実世界)

 本例は、実際のレンズデザイン (F2.8設定時)によって得られる画像中心部と同コーナー部の再現で、より現実的な例です。これらの図は、最高画質と称されるレンズデザインにおいても必ず存在してしまう収差や、製造上の公差が原因で生じる誤差も反映させています。収差の存在により、本来あるべき位置とは異なる場所に像を結んだり、スポットの形状を変えてしまうため、回転対称ではない形状を作り出します。全ての光学収差がこの形状の変化に関わっています。なお収差は、画像中心部よりもコーナー部において多く生じる傾向があります。Figure 1aや1bとFigure 3aや3bの各スポットを見比べてみると、大きな違いがあることがわかります。Figure 1は理論上のシミュレーションなのに対し、Figure 3は実際のレンズを用いてシミュレーションしています。収差がスポット形状にどのような影響を与えるかは、Figure 3cと3dをご覧ください。


Figure 3: 収差のある実際のレンズによるスポットサイズと画素出力の波長別変化

例4: 現実世界のレンズ性能 – 実際の画像

 Figure 4.4は、同じ焦点距離 (16mm)を有する2つの異なるレンズ (A & B)を、同じFナンバー (F2.8)、同じ実視野サイズ (水平方向で100mm)に設定して得られた実際の画像の比較です。これらの画像は、MTFFナンバー波長に関する各セクションに詳細に説明した内容全てを網羅していると言えます。被写体に用いたのは、スターターゲットアレイ (#58-835)で、実視野範囲全域及び全方向において広い空間周波数 (解像力)レンジの評価を一時に可能にします。システム性能の評価用に用いられるスターターゲットアレイや他のテストターゲット製品の更なる情報は、正しいテストターゲットの選択をご覧ください。

A Star Target is Imaged with Two Lenses with the same Focal Length, f/#, Field of View, and Sensor
Figure 3: 同一の焦点距離、Fナンバー、実視野サイズ、センサーを用いた2つの異なるレンズ (A & B)により撮影されたスターターゲットの画像: レンズAは実視野内のどの場所においても画質に優れるが、特に端部やコーナー部の画像を比べてみると、レンズBとの画質の差は一目瞭然である

 2つのレンズの性能差は、比較対象画像を比べることで明らかです (フル解像イメージは、ウェブサイトに紹介しています)。この比較対象画像は、全視野の中心部、中央下端部、及びコーナー部に像を結んだスターターゲットパターンの拡大画像です。なおこれらの画像は、3.45μmの画素サイズと500万画素の有効画素数を有するSony ICX 625 白黒センサーに、白色光バックライト照明器を外部光源に用いて撮影しています。Figure 4の画像比較により、レンズAの方が優れた性能を持っていることがわかります。特に画像コーナー部の比較対象画像に注目すると、コントラストの差が一目瞭然です。レンズBは、黒線と白線を差別化することがより難しくなっています。加えて、複数の収差の影響 (特に非点収差)が顕著で、ラジアル方向の解像の方が高いことがわかります。

 Figure 4の画像コーナー部の比較対象画像の一部を拡大した黄色枠と赤色枠内の画像は、黒線と白線の一対で約10画素分使用しており、別の懸念が生じることになります。画像中心部の解像可能な部分と比較して、像ボケにより隣接する複数の画素にまで像が跨いでしまっているコーナー部の空間解像力はかなり低下しています。500万画素カメラの空間解像度 (2448 x 2050)を有効に活用できている画像中央部付近とは異なり、コーナー部では実質500 x 400画素程度の空間解像度しかなく、VGAセンサー (640x 480)よりも低い解像力で再現していることになります。使用するセンサーの解像度をVGAレベルにまで下げたと しても、レンズによっては設計上の制約や製造上のバラツキが原因でコントラスト性能がサンプルによって異なり、引き続き問題を抱えることも考えられます。なお、レンズAの拡大画像部 (黄色枠)のコントラストは45%、対するレンズBの拡大画像部 (赤色枠)のコントラストは7%です。

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